小説

『華麗なる人生』越智やする(『王様と乞食』)

「旦那様? 君、何を言っている、旦那様は息を引き取っただろう」
 震える声でそう言うと、使用人は笑った。
「何を仰いますか。旦那様はご存命ですよ」
 慌てて旦那の部屋へ向かい乱暴にドアを開ける。そこには立派な椅子にゆったりと座る老人がいた。旦那だ。
「どうした? 幽霊でも見たような顔をしているぞ」
 背後から足音がして振り返る。使用人がいた。
「旦那様一名、準備完了しました」
誰に言うでもなく、大きな声でそう叫ぶ。
「間もなく治夫様の入れ替えも完了です」
 

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