何日も歩き続け、坂道が見える所までやってきた。マンモスには会わなかった。においもしなかった。坂道の下に立ったら、胸が締めつけられた。この上に自分のうちがある。こんな体をしているけれど、やっぱりお父さんとお母さんの娘なんだよ。危ない目にあっても、うちに戻らなければならないんだ。
なるべく足音をたてないようにして歩いた。でも、人間たちが暮らしている所に出てしまった。白っぽいテントがマンモスの骨や牙、体の皮でできていることに気がついた。不思議と怖くはなかった。人間はマンモスと闘い、殺し、食糧にした。マンモスの体を使って、暮らしの道具を作った。おじいさんマンモスも人間に見つかれば、テントの材料にされてしまうのだろう。あたしもそうなっちゃうんだろうか……。あたしの鼻息が荒くなった。いや、そうはならない。あたしはお父さんとお母さんの子。絶対、ふたりに会うんだ!
テントから人間たちが出てきた。ヤリをつかんで、向かってくる。あたしは鼻を振り上げ、足を踏み鳴らした。闘いは苦しかった。人間に追われ、丘の上に追い詰められた。後ろは崖。あっと思った時、転げ落ちた。雪がたまった所だから、けがはしなかったけど、体がずぶずぶ沈み込んでいく。鼻を突き上げ、息を吸い込もうとした。でも、それっきり、分からなくなってしまったんだよ。
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