小説

『おバカの王様』美土すみれ(『はだかの王様』)

「どっちにしても見ないからさ、よくわからんのよね」
「でも王様、前に素晴らしい布だとおっしゃって下さったではありませんか」
 詐欺師たちは焦りました。もしかしたら、自分たちが嘘をついていることがばれたのか? いやいやそれは深読みかもしれない。そもそもここは、嘘でも「見える」と言ってくれなければ話が進まない場面なのに。どうしよう、どうしよう……。
「いや、素晴らしい布だと思うよ」あまりもあっけらかんとした王様の態度に、詐欺師たちは困惑するばかりで、わけがわかりません。
「見えないのが残念だけどね。まあ、それは自分がバカだから仕方ないさ。だけど、この布のおかげで気づいたことがたくさんあった」王様はゆっくりと目を閉じながら言いました。
「目を閉じていれば、見えるはずの布も、見えないのと同じ」
「はあ……」詐欺師たちは、もっとわけがわからなくなりました。
「別にさ、王様なんてなりたくてなったわけじゃないし、とか思っていたわけ。だから目を閉じていた。自分が何もしなくても、なんとかなっているし」それから王様は、静かに目を開けました。
「見ようと思えば見えたのに、自分はこの国をきちんと見ようとしていなかった。この布は、それを自分に教えてくれた。だから素晴らしい布なんだ。この布が見える日が来るまで……」
 なんだかよくわからないけれど、だんだん深イイ話になってきたなあ、と詐欺師たちは思いました。そして、王様が自分たちに「王国特別はた織り士」なる称号までくれると言いだした時には、いたたまれず、その場から逃げ出したくてしかたありませんでした。
 

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