小説

『輪廻』沢田萌(『源氏物語』)

 マンションに着くと窓から灯りが見えた。
 また楓のプチ家出が始まったと思って、彼女を驚かそうとソッとマンションに入った。
 玄関に矢島の革靴と楓のスニーカーがあった。
 嫌な予感がした。
 胸は高鳴り体が小刻みに震えた。
 リビングには誰もいない。
 まさか……。
 静かに寝室のドアを開けた。
 ベッドの上で楓と矢島が体を重ねていた。
 私は言葉を失った。
 「だって私、あなたの娘ですもの」楓が言った。
 唇には笑みが浮かんでいた。

 

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