また一つ、物語とともに私は琵琶を棚に収めた。
さて、そろそろ店じまいと思ったその時、がらがらと引き戸を引く音がする。
「これを預かっていただけぬか。」
現れたのは、またもや僧形の男だった。夕闇迫る店内に、墨染めの衣に身を包んだ体躯が溶け込んでゆく。男のがっしりした体つきを見るとどうやら、もともと武人であったようだ。手には細長い錦の包みを持っている。それは一見したところ、笛のようである。
今日は楽器の預かりが続く。しかも僧形の男からとは。こんな日もあるものだ。
「いらっしゃいませ。あなたの物語を聞かせていただけますか。」