シンデレラの父親に、娘による裁きは行われなかった。
彼は頭を振る。ひどく疲れた。ヴァロワが労をねぎらってステーキを焼くと言っていた。帰らなければならない。しばらくしたら妻のもとを訪れよう。ふたりの継娘たちは元気だろうか。意識はシンデレラを離れる。彼は自分の日常に戻ってゆく。
みるみるうちに灰色の雲が湧いて、やがて雨が降りはじめる。王宮に賑やかな灯がともる。音楽が流れ、人々の談笑がはじまる。
シンデレラの父親を載せた馬車は寂しい小雨の中を家路につく。その後ろ姿をシャルルは見えなくなるまで見送る。城の時計塔が六時を告げていた。