小説

『凸凹仲間の新たな挑戦』春日あかね(『ブレーメンの町楽隊』)

初めて降りた駅で3人は、宿探しも含めて、街を散策することにした。ちょうど、大きな農家の前を通りかかったとき、門の近くに、鍬を抱えて、うつむいて歩いている男性を見た。
「どうしましたか?今日は、天気がよくて畑仕事もはかどったんじゃないですか?」
と、犬川が声をかけた。
「いや、それが、そうでもないんです」
「どうしたのですか?」猫柳(ねこやなぎ)がたずねた。
「実は、今日は天気がよいからと思って、畑仕事に出ようとしたところでした。そしたら、地主さんが話しているのが聞こえて来たのです。長引く不況で、出稼ぎに出ていた息子が戻って来て、さらに失業した親戚などの面倒を見なくてはならなくなったとか・・・。それで、私が借りている畑を売り払って、金にするというのです。私も、出稼ぎ先の会社が倒産し、次の仕事が決まるまで、畑で野菜を作って、それを街へ売りに出していたのです。ですから、私の収入源と言えば、この畑で出来る野菜ぐらいだったのに、それもできなくなるというと、どうしたらよいか・・・。ずっと考えているのですが、答えが見つかりません」
「そうでしたか・・・。でも、まだ諦めてはいけませんよ。どうです?私たちと一緒に繁座(はんざ)へ行きませんか?」呂端(ろばた)が言った。
「繁座(はんざ)?一体何をしに行くんですか?」
「私たちと一緒に音楽をしましょう。何か楽器、いや歌でもいいです。何かできますか?」
「何と言われても・・・。昔、子供の頃、ハーモニカはやってましたけど・・・」
「はい、決まり!」犬川と猫柳(ねこやなぎ)が嬉しそうに叫んだ。
「私は鳥山と申します。もし、よろしければ、今夜はうちで泊まっていきませんか?それで、明日の朝、電車で繁座(はんざ)へ行きましょう。うちへご案内します」

 グ〜ッ!!!
「あ、これは失礼!ついつい、お腹がすいて・・・」
 犬川が頭をかきながら、言った。
「私もお腹がすいてきました。そう言えば、電車に乗ってから何も食べてなかった」
 猫柳(ねこやなぎ)も鳥山の方をチラリと見ながら、言った。
「うちには、たいしたものではないですけれど、食べるものならありますよ。今朝取れた新鮮な野菜と市場で買ってきた肉やフルーツもあります。みんなで食べましょう」
「ありがとうございます。大変助かります。正直、今日は少しでも肉のついている骨にありつけたら、言うことはないと思っていましたから」と、犬川が言った。
ということで、これで四人となり、四人は鳥山の自宅を目指して歩き始めた。歩くこと30分、日は暮れ、辺りはだんだん暗くなってきた。すると、一つの明かりが見え始めた。その明かりはだんだんと大きくなり、やがて家が見えてきた。
「あれが私の自宅です」
 鳥山の家は、立派な二階建ての家で、外にはガーデニングが十分楽しめるほど広い庭があった。

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