小説

『眠れる森の』望一花(『眠れる森の美女』)

「わかってる。でもなんていうか10年眠っていたからね」
「眠れる森の美女じゃなくて、眠れる森野、なあんてな」
とぐんちがからかってきた。
「ということは、ヒメが起きるのを待っていた王子様がぐんち?」
私がおどける。
「えー」
「えー」
また声が重なってしまった。でも・・・本当にぐんちは私の王子様かも?
 ふと見ると、ぐんちが作業していたのは、仕事の写真ではなくて私たちのクラス会の時に撮ったたくさんの写真が入ったファイルだった。10年後に戻ったその日に行ったクラス会で見た同級生は、ただのつまらな大人に見えたけれど、今日その写真の中で笑うひとりひとりは、とても魅力的だ。
「寝過ごしたやつも、寝不足で疲れがたまっているやつも、これからだよな」
と自分の頭を私にぴったりと寄せて、一緒に画面を見ながらぐんちが言う。それは写真の中の友と私へのエールのような気がした。

1 2 3 4 5 6 7