コラム

『クリスマス時期に本について考えていたら』

 ちょっと前までは「クリスマスがカップルのためみたいになっているのは日本だけだ、しかも24日に・・・」なんて野暮ことを声高に主張する人がけっこういた気がしますが、今ではそんなつまらないこと誰も気にしていませんね。
 海外から入ってきて日本独自の進化を遂げたのは、クリスマスもラーメンも同じです。その偏屈さで知られた大作家 永井荷風は名作『濹東綺譚』(1937年)の中で、

 

”紅茶も珈琲も共に洋人の持ち来ったもので、洋人は今日と雖(いえども)その冷却せられたものを飲まない。これを以て見れば紅茶珈琲の本来の特性は暖きにあるや明である。(中略)わたくしは何事によらず物の本性を傷けることを悲しむ傾があるから、(中略)其飲食物の如きもまた邦人の手によって塩梅せられたものを好まないのである。”

 

と、昭和初期の東京人がアイスコーヒーやアイスティーを愛飲するのを盛大に批判していましたが、今や昔の話です。

 

 そこで気になるのが、日本から海外に飛び出したものがどうなっているかということ。ブックショートだけに早速、Amazon.comで”Japanese Literature”を検索してみました。

 

 

画面に萌え系表紙の小説がたくさんが出てきたのに驚きつつ、スクロールしていくと、目に飛び込んできたのは、

 

『I Am A Cat』と記された表紙。

 

I AM A CAT
 

 一瞬何のことだかわかりませんでしたが、「Soseki Natsume」の文字を見つけて納得しました。これ、夏目漱石の『わが輩は猫である』の英語タイトルなんですね。“僕”も“俺”も“私”も“わが輩”も”I”で表現できる英語の懐の深さに思わずため息が。

 

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