「そんな話しをさ、きみは信じる? 信じたい?」
わたしは、しゃぼんのガラスに映った虹を見ていた。
そのときちょっとだけ思った。
目の前にいる背が中ぐらいのちょっとかっこいい
そのこになってみたいと。
背が高いとか低いとかどうでもいい。
わたしはいつも低い子を好きになるけれど。
それはなりゆきだから、どうでもいいことだ。
わたしは冒険がしたくてうんと返事した。
そしてわたしはそのこと手をはじめてつないで
虹の下を潜ってみた。
いつのまにわたしはそのこで、そのこはわたしに
なっていたのかもわからないぐらい、そのこは
わたしでした。
わたしになったそのこは自信なげにそのしゃぼんの
部屋に佇んでる。
「もうぎりぎり。こころのあたりがすっごい
せつないんだけれど」
ぎりぎりのぎりはおにぎりのぎりみたいで少し
おかしかった。
そう言ったきり、その子はますますちいさくなっていた。
それは、わたしのくせだ。
すぐどうでもいいことに、切なくなる。
もうその子はわたしなんだなって思った。
そして、そのこは言った。
「たとえばきみがものすごくみにくい毒虫になって
いたとするじゃない、そうしたら きみを・・・」
カフカが好きなんだその子って思った。
毒虫になったわたしは、その子にどうされるんだろう。
そのときわたしは夢の中。
だから、わたしはかれのその最後のことばがなにも
聞き取れなくなってしまっていた。