小説

『女の子の病』利基市場【「20」にまつわる物語】(『少女病』)

 少女の私を愛している。私はそれを、知っている。だから、今日、私は死んでしまう。

 私は色白く美しい身体を運びながら考えていた。
 先生は今、甘い髪の色を、すぐに求めることができるのだ。先生の願いはいつでも、容易にかなってしまう。
 幸運なことに、私はまだ少女なのだ。柔い肌を残し、この身に触れさせる余地を備えている。大してこちらから動かずとも、たいていの男性は寄ってくる。だから、私はまだまだ適当な会話を繰り返すことができる。相手の目をみればいい。ただじっと見ていればいい。それだけで、彼らは、私を好意的に受け止める。
 とはいえ、中学生の頃のように俗悪な心など持ってはいない。ここが公共の場であるということが理由ではなく、ただ単に、私はもう大人になる。青い青い欲は既に、開花している。それに、もっとプラトニックな欲情といったって、もう自分のような成長しきった身体になった者が、可愛らしくそれを抱くわけにはいかない。純粋に恋をしたいったって、はじめてだれかの心を誘うときのような、初々しい心など、もう持ってはいない。と思うが、まだここに少女として、立っていられる。すぐに死にたいなどとは、決して思いはしない。いま死ななければ、もはや美しくないなどとは、決して思いはしない。ただ私は……。

――壁ドンされたくてぇ。
 床ドンでもいい。あごクイでもいい。足ドンでもいいし、肘ドンでもいい。それか両手ドンなら最高かもしれない。でもやっぱり壁ドンがいいよぉ。

 私は、首を真っ白い襟で覆って、絢爛(けんらん)豪華(ごうか)なスカートから鶴のような脚を直立させて、そんなことを考えていた。
 通学の車内で、先生の視線を感じて、もう一年が経つ。先生の瞳が、赤い色を帯びているのを、私は確信していた。一心に私を見ている彼の瞳の色と、それ以外の瞳の色の、どこが違うのかということも確信していた。
 だって、今日も私に向かっている。いつも先生はスタンションポールの側に立って、頭のいくつかを交わしながら、私の首元、髪が柔く散るあたりを、熱く焦がす。
 私は今日、ついに二十歳になる。寂しさ、寂しさ、寂しさ、この寂しさを救ってくれるものはないか、あの頃の、少女の姿の一つでいいから、もっと本当は小さな私の身を、その暖かい手で巻いてくれるものはないか。そうしたら、きっと復活する。必ずそこに生命を発見する。このたゆんだ血が新しくなれると思う。けれどこの私が実際それによって、新しい勇気を恢復(かいふく)することができるかどうかはもちろん疑問だ。けれど、私は……。

――触ってくれなくたっていいよぉ。わがままは言わないから。ただ壁ドンをしてほしいだけだって。それだけで満足するって。いいじゃん。こっちきちゃえよ、先生。人の目とか、もうどうでもいいからさ。

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