小説

『風とやってきた娘』宮重徹三(『きつねの嫁入り』)

 すると一匹の子ぎつねが元気よく飛び出してきた。
「クックックッ」
 また、一匹の子ぎつねが、恐る恐る出てきた。
「クックックッ」
 三匹目がゆっくりと出てきた。
 竹林の前に、五匹のきつねが並んだ。
 親きつねたちの立派なしっぽと、子ぎつねたちの可愛い目がじじとばばの目に入ってきた。
 間違いなく、妙と三郎と、その子供たちだ!
 じじとばばは胸がいっぱいになった。
「こっち来い」じじが言って、ばばが手招きした。
 妙きつねと三郎きつねが歩き、その後を三匹の子ぎつねが追ってきた。
 妙きつねと三郎きつねは、しばらくじじとばばを見ておったが、三匹の子ぎつねが絡みついてくるので、五匹はしばらく庭を駆け回ったりして遊び始めた。
 しばらく遊んだ後、子ぎつねたちは妙きつねの乳を飲み始めた。
 横で三郎きつねが見守っている。
 じじとばばは、娘夫婦と孫たちを見ている気持だった。
 五匹と二人は夕焼けの中、幸せな時間を過ごしていった。
 桜の花びらが風で飛ばされていった。

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