小説

『怪物さん』大前粟生(メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』)

――食後のひとときをいかがお過ごしでしょうか。わたしは楽屋においてあったいくつものやきそばパンを食べすぎてお腹がパンパンです。そのことをスタッフさんにいったら、え、あんたの楽屋にはやきそばパンなんて置いてないよ、トキちゃんはいつも通りコンビニ弁当だよ、ですって。そう、わたし、楽屋を間違えていたんです。焼きそばパンが置いてあったのは某お笑い芸人さんのお部屋でした。今ごろ彼、おれのやきそばパンはどこだー、なんて怒り狂っちゃったりしちゃって。おーこわ。みなさんこんにちは、北条院時子です。「人生は一期一会」のお時間です。今期の「人生は一期一会」はハロウィン特集です。そこで今回は、今なおハロウィンで大人気の、怪物さんをゲストにお迎えいたしました。怪物さん、こんにちは。
 こんにちは。
――今日も顔色が優れないようで。
 よくいわれます。
――普段はなにを食べてらっしゃるんですか。
 普段はなにも食べていません。食べなくても大丈夫なんです。
――とかいって、本当は食べてるんでしょ。
 いやあ、まぁ。
――なにがお好きなんですか。だれにもいいませんから。
 そうですね。やきそばパンですかね。
――空気読ませちゃったみたいになりました。
 いやあ、本当に好きなんですよ。
――どういうところがお好きで。
 あ、この話続けるんですか。
――ええ。
 なんていうか、食べてるとどうしてもこぼれるくらいやきそばがパンに挟まれているところとかですかね。
――へえ。
 ええ。

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