『だからボクは、今がいちばんしあわせ』
サクラギコウ
(『浦島太郎』)
浦島浜で亀を助けたボクは、亀の背中に乗って竜宮城へ行ってきた。戻ってくるとボクの家はなくなり、家族もいなくなっていた。3か月と思った竜宮での日々は300年だったのだ。300歳の爺さんになりたくなかったボクは毎日毎日考えた。だが寂しさは増すばかりだった。
『梅の花の絵』
中杉誠志
(『梅若七兵衛』)
東京で放蕩生活の末、派遣切りにあって借金をこしらえたおれは、伯父が死んだという報せに地元の広島に帰ることになった。そこで形見分けとして一枚の絵をもらったが、質屋に出すと思いもよらぬ高値がついて・・・
『夜空の月』
吉岡幸一
(『かぐや姫』)
誕生日の夜、姫子は婚約者の和也に別れを切り出す。父が亡くなって田舎で一人暮らす病弱な母、敏江の面倒をみるため帰りたいと言う。和也は自分も田舎に行って暮らすことを提案するが、それは夢を壊すことで姫子は反対した。話し合っている最中に、突然田舎から来た母、敏江が現われ二人を諭す。
『おやすみ』
香久山ゆみ
(『白雪姫』)
誰かの声を振り切って、私は深い夢の中へ。城のバルコニーから海原へ飛び出し、森の奥深くへ。天使の歌声が聞こえ、ようやく私は思い出す。これは夢ではない、走馬灯なのだと。毒林檎を食べて倒れた私は、再び赤い真実の実を口にして目覚める。そうして林檎の毒は自らが生み出したものだったと知る。
『無敵の蠅取りばあさん』
サクラギコウ
(『貧乏神と福の神』)
ゴミ屋敷と言われる家におばあさんが一人で暮らしている。近隣住民からの苦情にも聞く耳を持たず町内の厄介者だ。しかしこのばあさん、誰にも負けない特技を持っていた。蠅取りの名人で蠅を見つけると瞬時に仕留める。そんなある日、町内で大量の蠅が発生する。発生源は蠅取りばあさんの家だとして住民が押し寄せるのだが…。
『益荒男の風』
牛久松果奈
(『雨月物語 蛇性の婬』)
十年ぶりに会う友人の恋人は、お盆の送り火の日に、牛に乗り遅れた魂だった。その魂が、私のほうに乗換えをして、短い間だが心を通わす。友人が霊能者を連れて、取り返しに来る。そして、私は、想念を蛇に飛ばして、取り返しに行く。この世は地獄と変わらないことを魂は悟り、あの世に帰る。
『泡沫のお守り』
根岸桜花
(『人魚姫』)
今年で十六歳になるルグレは選ばれし戦士。海で荒れ狂う怪物、水龍を退治すべく海へ偵察に出向く。しかし嵐に巻き込まれ、乗っていた船は転覆し、ルグレは海へ投げ出されてしまう。彼は幸運にも砂浜に流れ着き、そこでディーネと名乗る少女に声をかけられて目を覚ますのだが……。