『神、再び来たりて』
十六夜博士
(『ヤマタノオロチ』)
キャバクラ通いと、喧嘩に明け暮れる問題児のスサノオ。姉のアマテラスに叱られる日々を送っていた。そんなある日、命の保証のない危険な任務の初代特派員にスサノオが選ばれたことを聞かされる。名家の面汚しの放蕩息子に手を焼いた父親が、スサノオの改心を狙って推挙したらしいが……
『文六と夢地蔵』
甘利わたる
(『みそ買い橋』)
百姓の文六は、ある日小僧の夢を見た。江戸日本橋に四日間立ち続ければいい事があると告げられた文六は、その通りに江戸へ出て橋の上に立ち続けたが何も起こらない。陽も沈みかけた頃ひとりの男が声をかけてきた。文六の夢話を聞いて笑ったが、彼もまた夢を見たという。その夢とは・・・
『ツエツペリンNT号の誘因』
イワタツヨシ
(『かぐや姫』)
友人の結婚式に参加してその会場のホテルに一泊した。その夜、私はホテルの前の海辺で空から落ちてきた女性を救助する。彼女は時間旅行者で、飛行船を途中で降りていた友だちの「かぐや姫」を連れ戻そうとして探していた。
『made in lovesick』
和織
(『東京ロマンティック恋愛記』『職業婦人気質』吉行エイスケ)
それの心は、いつもあまり明るくない場所にあり、その少し凝り固まったような、とろみのあるような光でないと、それ独自の光合成を成り立てることができなかった。曇った、或いは色のついた空気を吸っていないと、それは生きていられない。そういう者が、また選ばれ、生を受ける。
『Frozen Time ~押し絵と旅する男と旅する女~』
アカツキサトシ
(『押し絵と旅する男』江戸川乱歩)
北欧最果ての地でオーロラを見た僕は、南へと走る列車の中,眠りに落ちる。目を覚ますと、誰もいなかった車内にもうひとりの乗客の姿。黒いワンピースの女。女は写真立てを窓ガラスに向け、立てかけた。引き寄せられるように近づいた僕に、女はその写真にまつわる奇妙な話を語りはじめる。
『吾輩はブスである』
中杉誠志
(『吾輩は猫である』)
彼氏いない歴=年齢の吾輩は、三十才を迎える今年、自殺しようと思うが、処女のまま死にたくはない。そこで出会い系に登録し、メッセージをやりとりしたうちのひとりと会うことになった。すると、優しげな青年が現れて・・・
『正直者の斧』
見坂卓郎
(『金の斧』)
女神の泉に、きこりが斧を落とした。女神は、マニュアルに沿って金の斧や銀の斧、きこりの斧を順に出して質問を進める。女神が彼を〈正直者〉だと判断したとき、きこりは思わぬ言葉を口にする……
『石太郎』
佐藤邦彦
(『桃太郎』『竹取物語』『浦島太郎』)
鬼退治から数年後。毎日酒浸りで自堕落な生活を送っている桃太郎。お婆さんに泣きつかれ鬼ヶ島へ二度目の遠征へ向かう事に。そこで石太郎、かぐや姫、浦島太郎と出会い、共に鬼ヶ島を目指すことになるが・・・