『みんな誰かを好きになる』
広都悠里
(『はちかづきひめ』)
いつも自分を貫く中道日和は、空気を読めないのではなく読まないのだと友人の梨花に指摘される。ひょんなことからいじめの標的となった日和は、ポジティブ王子を目指す古川新のたったひとことで新しい、明るい世界を知る。
『声の欠片』
もりまりこ
(『薄暮の部屋』)
僕はフローリングの部屋を逃げ回る。それはオリーブオイルがたゆたっている時の光を放つ色に似た欠片だ。でも油断していると、僕はこれに瞬時にして命を奪われかねない。ぼんやりと天井を見上げると欠片が突き刺さっていたあたりにぽっかりとした穴をみつける。まるで妻の耳のピアスの跡のような穴を。
『夏は気球に乗って』
義若ユウスケ
(『春は馬車に乗って』)
春は馬車に乗っての前日譚です。ある日、町に気球がやってきた。アレクサンドル・デュマとおなじ誕生日の少女と、気球乗りのおじ様の、ひと夏の恋物語……
『われ太陽に傲岸ならん時』
末永政和
(『イカロスの墜落』)
イカロスは墜落などしなかった。彼には高く高く、太陽よりも高く飛び続けるべき理由があったのだ。迷宮で出会ってしまった化け物のために。父の呪縛から逃れるために。
『続・銀河鉄道の夜』
藤野
(宮沢賢治『銀河鉄道の夜』)
大人になったジョバンニは銀河鉄道の動力を研究し、天河石と月長石の関係を発見したのです。たくさんの博士たちの前で発表したジョバンニの説はたくさんの人たちから興味を持って受け入れられました。その夜は星祭の夜でした。