『不思議なたまご』
広瀬厚氏
(『金色の卵』)
小学三年生の良太は、遊んでいた原っぱで、虹色をした不思議な丸いものを見つけた。それを父親に見せると、何かのたまごじゃないかな、と言う。そして良太もそう思った。子供部屋の机のうえに不思議なたまごを乗せ、いろいろな空想をして楽しんでいるうちに、良太はうとうとして寝てしまった。
『人形寺』
武原正幸
(『人形の墓』)
子供のない私たち夫婦は、遠縁の娘を引き取る。弥生というその娘は、家族五人が死んだのは自分に取りついた不幸のせいだという。その不幸を何とかするために、私たちは人形寺と呼ばれるお寺を訪れる。
『私刑』
岩崎大
(『猿蟹合戦』)
誰からも嫌われる男は、いつも笑顔だった。ある日、街で一人の老婆が死んだ。老婆のつくりだしていた歪んだ時間が消え、代わりに均一な時間と、死が街に広がり、やがて男に私刑が下される。
『奪う声』
菊野琴子
(『ルンペルシュティルツヒェン』『灰かぶり』)
「ふつうのひとになりたい」と、切なる思いで願った。その願いは叶い、「私」はふつうのひとになった―――――でも、いま、夢を見る。現実からあらゆるものを容赦なく奪っていく夢。夢の声は、「私の名前を当てることができたなら、お前に全てを返してやろう」と嗤うのだが…。
『タイムマシン エピローグ2』
川路真広
(『タイムマシン』)
『タイムマシン』の語り手「私」による、五〇年後の第2のエピローグ。時間旅行者とは一体何者だったのか。「私」は再検証を進め、物理学者や生物学者の知見を借りながらその謎を考察する。三〇億年前の地層から発見されたマシンの部品から、「私」の推理は地球生命発祥という一回きりの出来事に至る。
『楽園』
西橋京佑
(『桃太郎』)
14年前、妹を殺された主人公・桃井は、憎しみと疑問にまみれて生きてきた。友人・猿渡に、罪人が収容される鬼ヶ島地区、別名“楽園”に犯人が移送されているのではと言われ、14年間の清算をするべく“楽園”に向かう。勧善懲悪とは何なのか、そんなお話。
『偶景と旅する男と』
もりまりこ
(『押絵と旅する男』)
<みらーじゅ雑貨店>を営む郷田と出会った栞。義眼のような虹彩を持つ彼とは、視線を合わせた瞬間にすでになにかが終わりを孕んでいる予感がしていた。たいせつなものが何かわかる方法を教えてくれたある日、栞は衝動に駆られた行為をじぶんに許してしまう。それが郷田の望みだったから・・・。
『銀の鱗と蝋燭と』
もりまりこ
(『赤い蝋燭と人魚』『浦島太郎』)
人魚の女の子は、ある日溺れかけているところを太郎という名の漁師に助けられる。ただひとつ太郎は、玉手箱と人助けにトラウマを感じている男だった。恩を仇で返すようなことはしないなら助けてあげてもいいと、人魚に約束させる。ふたりはひとつ屋根の下で暮らしてゆくけれど。