『合格!』
山本康仁
(『ネズミの嫁入り』)
小さい頃に親が離婚し、マイペースな父・岳志と暮らしてきた詩織。決して裕福とはいえない生活からの脱却&脱実家暮らしを目指し、高収入な企業への就活を目指し続けるも落とされてばかりだった。自分の好きなことを仕事に。そう姉や父から言われ、詩織は就活を再スタートさせる。
『面影』
野本健二
(『鶴の恩返し』)
寒くなってくる季節のある日、女は夕食の支度を始める。何度も何度も繰り返して来たルーティーンである。その日は、彼のための夕食を作っていた。一段落し、今度は編み物を。そこに彼が歩み寄ってくる。今日は10年の記念日だと言う。その時、玄関のベルが鳴って、やって来たのは……
『与吉と台風』
襟裳塚相馬
(『画図百鬼夜行』)
『画図百鬼夜行』で有名な鳥山石燕には、妖怪を見ることができる与吉というライバル絵師がいた。与吉は石燕が描いた台風に潜む妖怪を偽物だと見破り、本物を描くことに命をかける。ついに台風がきた日、与吉は舟で海に出た。そして、台風の妖怪の正体をその目に見たのだが……
『父ちゃん』
想
(芥川龍之介『父』)
仕事で数年おきに世界各地を転々としている「私」。新しい赴任先で娘が通う学校では、父親参観が開催された。教室に現れる父親たちを、好奇の目で見つめ、品定めする子どもたち。その中心には、一人の男の子がいた。そんな中、「おじいちゃん」と呼んだ方がふさわしいような、年配の男が現れ……
『約7000羽』
大前粟生
(『ヨリンデとヨリンゲル(グリム童話) 』)
空に浮かんでいる目から逃れるために、男は女を連れて魔女が住むと噂される森へいくことにした。森のなかにある大きな家まであと100歩のところで、女は魔女に連れ去られ、約7000羽の鳥がいる部屋に閉じ込められる。部屋に羽が満ちるとき、おばあさんが現れた。一方、男は森をさまよっている。
『鳥も鳴いてたろ』
よねじまけんと
(今昔物語集『信濃守藤原陳忠が御坂峠に落ちること』)
下人は、主君のことを尊敬し慕い、主君もまた下人のことを信頼する。理想の主従関係にみえた二人だったが、ある出来事をきっかけに人の心の奥底に淀むまったく異なる思いが、下人を支配するようになる……
『銀河モノレールの海』
梅屋啓
(『銀河鉄道の夜』)
俳優を夢見て上京した主人公星也(せいや)は都会で一人暮らしをしながら夢を追う苦しさに耐えかねて故郷の銀杏島(いちょうじま)へ帰省する。本州と銀杏島をつなぐ銀河モノレールの中で、幼馴染の晴樹(はるき)と再会した星也はいつの間にか銀河の海に迷い込み、夢について語り合う。
『名付け』
須田仙一
(『寿限無』)
最近子供が出来たばかりの老夫婦が隣人に、あるお店を紹介された。それは子供に名前を付けてくれるというお店だった。そこの店員さんの説明によると、どんな字にも良い面、悪い面があり、それを総合的に考えることが大切らしい。老夫婦は迷いながらも、ある名前を付けることにした。
『APPLE SOUR』
月崎奈々世
(『シンデレラ』『白雪姫』)
私はシンデレラ。おとぎ話のお姫様として生きることに、実はウンザリしていた。そんなとき目の前に現れたのは、何故かギャル語を喋る白雪姫だった。私達はりんごサワーを飲みながら、お互いの生き方、そして本当の夢について語り合い、新しい人生を切り開いていく。合言葉は「絶対イケるっしょ」。