『泡になる』
石井里奈
(『人魚姫』)
彼女は失恋した。昨日、予てから付き合っていた彼に別れを告げられたのだ。
こういう日はなにかに没頭するのが一番だと、彼女は知っていた。それは例えば料理だったりもする。別れから一日、感情の波に呑まれながら孤独とうまくつき合おうとする彼女の小さな恋のお話。
『おっぱい谷』
エルディ
(落語『頭山』)
江戸のある長屋に、熊五郎という男がいた。「おっぱい好き」を公言してはばからない。「おっぱいもみてェ」とわめく熊五郎に長屋の連中も困り顔。金がないから女郎屋にもいけない熊五郎は、ついに神頼み。すると熊五郎に胸に大きなおっぱいの山が二つできて……
『童子と傘』
花乃静月
(『小人と靴屋』)
勘吉とお松の夫婦は傘屋を営んでいるが、売れ行きは悪く貧しく暮らしていた。ついに一本分の材料だけを残し迎えたある朝、美しい傘が出来上がっているのを目にする。その傘が売れたおかげで新しい材料を買えることになったのだが、傘を作る正体が気になる二人は、その晩作業場を覗きに行く。すると――