ブックショートでは、原作ごとに優秀作品を紹介していきます。
今回は、『桃太郎』特集。2014年度の応募作品の中でもっとも元ネタとして使われた作品です。
いろいろな桃太郎が活躍したり、しなかったり……
「では、そちらの落ち度ではないと?」低く抑揚のない声で言う。口角を上げて怒りを潜らせる。幾度ものクレーム電話をかけてきた熟練の技。「それが御社の正式な回答ということでよろしいですね?」5月で46歳。独り身である。
英雄となった桃太郎に、ある日一通の手紙が届く。差出人は、鬼が島で唯一生き残った女の鬼。そこには、決戦の記憶とその後の彼女の人生、さらに、桃太郎の”出生の秘密”ともいうべき内容が記されていたのだった。
バーテンダーの侑は、九歳の琉音やその父親、友人たちとキャンプに。テントで皆が寝静まった夜、寝袋に包まれた琉音に面白い話をとせがまれた侑は困り果て、即席の昔話を語りだす。「川から巨大な芋虫が流れてきました。」
鬼ヶ島での決戦後、故郷の猿山でボスに君臨する猿は、新世代の台頭に悩まされている。一方、犬は恵まれながらも不本意な暮らしを送っていた。彼らが共に浸るのは、“あの頃”の思い出だった。
満月が照らす山道で密談する男たち。目的は、大名の隠し子の奪還だ。老夫婦に拾われた子供を取り戻すため、彼らは次々と人を送り込むが、誰一人として帰ってこない。
ついに、親分が乗り込むことに。
鬼退治へ向かう桃太郎と犬、猿、雉。鬼が島で暮らす鬼。家で待つおじいさん、おばあさん。それぞれの思惑が複雑に交錯し、疑心暗鬼が広がる。誰が本当のことを言っているのか、嘘をついているのは誰なのか。
海の青さは照らされた太陽の光と澄んだ空気によってより一層映えている。欲張りで有名な爺さんと、両ほっぺに大きなこぶを持つ爺さんは、そんな海辺で焚火をしながら冬の寒さに耐えていた。すると、近くの藪から鬼が現れ…
暗闇に包まれた浜辺に打ち上げられた一隻の小船。今、鬼を見たと言っても信じる者などいないだろう。そのくらいに桃太郎の鬼退治は有名な話で、悪さをする鬼は桃太郎に全て退治されてしまったのだから。そう僕を除いては。