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『ジャングル美容室』広都悠里

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 私は人生について考えている。まだ二十二歳、もう二十二歳。この先どうやって生きていこう。だって通帳の残高が2058円だ。
「はーあ、マジか。どうするんだよ、茅野千穂!」
 自分に問いかけたところでりろりろりん、スマートフォンが鳴った。画面に「林野」の名前を確認すると、ため息を隠して素早く耳にあてた。
「もしもーし!」
「茅野ちゃん、またオーデション駄目だったの?」
 冷ややかなくたびれた声に「んー、そうみたい」とからりとした声で返事をすると「もう本当にね、ヤバいよ?」と念押しされた。
「ですよねー」
 背中がひやひやするほどヤバいですよ、事務所勤めで月末にきちんとお給料が出る林野さんの百倍ヤバいです。待ち合わせ場所を無理やりファミレスにしてもらってランチをご馳走してもらおうと目論むぐらいにヤバいです。
 オーディションと名のつくものは片っ端から受けたし、スーパーのチラシの洋服のモデルにも応募した。結果惨敗。ドラッグストアのバイトも落ちた。髪がオレンジ色だったからだろうか。黄緑と黄色の蛍光色ネイルを「目がちかちかする」と嫌そうな目つきで見ていたから派手なネイルのせいかもしれない。
「個性というか、こう、グッと引きつける何かが欲しいんだよね」
 指を曲げて机を叩くのは退屈の印。あー、またかよ。それ、どうやったら手に入りますか? 個性って何ですか? どうすれば選んでもらえますか。もっと痩せる? うんと太る? だめだめ、そんな人達はもういっぱいいる。世の中にはたくさんの人がいてみんな違ってみんないい、どんな花も美しい。奇妙な歌や変わった服装も溢れている。高性能なスプレーやワックスを使えば不思議な髪形も思いのまま、どんな色の髪も今時珍しくない。目の色だってカラ―コンタクトで自由自在。優秀なメイク道具を駆使したら漫画のキャラクターにだって変身できる。ゾンビになっても背中に羽が生えても新鮮味皆無。こんな世の中に誰がした。自由過ぎて、不自由です。
 暇だから約束の二十分前に到着、メニューを広げて何を頼むか画策していた私はこのうえなく真剣な顔をしていたと思う。
「茅野ちゃん、どうかした?」
「いや、何を頼もうかなーと思って。私、昨日から何も食べていないんですよね」
「無理なダイエットはやめたほうがいいよ。体が資本だから」
「はーい」
 林野さんの機嫌が悪くなる前に素早くサラダとパスタのランチセットにケーキまで追加して頼む。ささやかな贅沢。今度ケーキと巡り会えるのはいつの日か、なるべく早く再会できますように! ホットコーヒーだけ頼む林野さん、余裕あるね。飲み物なら水があるじゃないか! ビバ無料サービス! 私は日本の優秀な水道水を信用しているよ。お金を払うなら食べるものを頼みたい、コーンのバター炒めでもミニサラダでも構わない、とにかく食べ物を! と思う私の向かう先はどこにあるんだろう。ハリウッドでないことだけは確かだ。
「その髪と爪、どうしたの?」

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