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『明日への一歩を踏み出す魔法』文月めぐ

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 夢田ここあ、というまるで少女漫画の主人公みたいな名前の転校生は、入学式の一か月後にやってきた。目立つのは名前だけではなく、彼女は最初からこのクラスにいます、みたいに遠慮なく周りに話しかけて、どんどん友達を増やしていった。引っ込み思案な私のグループにも声をかけてくるまで、時間はかからなかった。
「教室の隅っこに固まってないで、福岡さんたちもみんなで仲良くしようよ。その方が、絶対、楽しいよ」
 夢田は「絶対」の部分に力をこめて言い切った。私は隣で弁当を食べている仲の良い美涼ちゃんとこっそり目を合わせた。「皆で仲良くする」というのが苦手だから私たちは隅っこにいるのに。放っておいてほしいな、と思った。

 中学に上がってから「意外と運動神経良いんだね」と言われる。おとなしい人は運動ができない、という偏見は世の中に常に存在している気がする。
「舞ちゃん、ナイス!」
 バレーの経験はないけど、体育の授業ではある程度活躍できる、という私は、同じチームになった子には重宝された。休憩時間にはあまりしゃべらない人とも体育の授業では緊張せずにハイタッチできる。その時も私のアタックが決まって、チームメイトと声を掛け合っていた。流れる汗さえも心地よい。そのアタックをうまく取れなかったのが夢田ここあだということはあまり気にしていなかった。
 体育の授業を終えて、結んでいた長い髪をほどく。もう昼休憩の時間に入っているからゆっくりと着替えることができる。そう思って美涼たちとおしゃべりしていると、更衣室に大きな高い声が響いた。
「福岡さんのアタック、ちょっと強すぎない? しかも私を狙ってるよね。私のこと嫌ってるの?」
 その瞬間しん、と空気が冷え切って、同時に私の背筋も凍った。夢田はどんどん友達を増やしていって、いつの間にか大きなグループのリーダー的存在になっていたから、彼女の発言はクラスに大きな影響をもたらす。そのことを一瞬のうちに悟った私は、言い訳をすることもできずに俯き、夢田にさらなる攻撃のチャンスを与えてしまった。
「福岡さんって暗いし、声小さいし、」
 そして私を指さす。
「その長いうねってる髪の毛も、なんか気持ち悪いよね」
 自信たっぷりに言い切ると、ハハ、と笑いを漏らす。周りの夢田と仲良しの子もつられて笑っているのを見て、きゅっと髪の毛の先をつまんで引っ張る。ふわふわのくせ毛、いつも杏菜さんに整えてもらって気に入っていたはずなのに、急に格好悪いものになった気がしてしまう。
 体が固まって動けなくなっていた私の腕を、美涼がつかんだ。

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