メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『幸ウンの白い鳩』白妙スイ

  • 応募要項
  • 応募規定

 服装だって、街中でよく見るオシャレな女性といった様子だ。
 明るい柄のスカートに、上はブラウス、まだ春先なのでジャケット……。
 俺は質問よりも、彼女がとても綺麗であることに目を奪われてしまった。
 おまけに顔立ちまでかわいらしかった。メイクもナチュラルで嫌みがないし、くりっとした目が印象的だ。
……何故、こんなかわいらしいひとが俺に。
 ぼうっと思ったけれど、数秒後に、やっと、はっとした。
 いや、俺を気に入ったから声をかけた、なんて理由であるものか。
 階段を上がったところでぼうっと立ち尽くしていたから、怪我をしたか、体調が悪いのかと心配してくれたのだ。
 一気に恥ずかしくなる。
 だって間抜けすぎるだろう。
 階段で鳩にフンを落とされたのも間抜けであるし、ショックを受けて突っ立っていたのもそうだ。さっさと割り切り、歩き出すべきだったのに。
 情けなさすぎる。
 おまけに知らないひとに心配までかけてしまった。
 自分にほとほと呆れつつ、俺は「いえ……」となんとか言った。
「えっと……ちょっと、落とし物を……」
 だがその言い淀んだ言葉に、彼女は眉を寄せた。違う意味で心配そうな顔になる。
「大事なものですか? 駅員さんに言えば見つかるかも……」
 言われたのは優しい言葉だったが、それは誤解であった。
 俺はまたしても情けなくなった。恥ずかしくて遠回しに言ってしまったために。
「い、いえ! そうではなく……」
 あわあわ言った俺に、彼女は不思議そうな顔をした。
 これは誤魔化せなさそうだ。
 いや、ここにきて誤魔化せるはずがないし、それは彼女に失礼だ。
 俺は観念して口を開いた。
「その……階段の上から降ってきてですね……」

 
「まったく、すごい確率ですね!」
 ごぉぉ、と耳元ですごい音が響く。
 その中でも、彼女がおかしそうに笑うのが聞こえた。
 数十分後、俺はコンビニでも会社でもなく、何故か美容室の椅子に座っていた。
 髪を洗ってもらって、さっぱりして、今は鏡の前でドライヤーをしてもらっていたところだ。
「はは……ほんとっすね……」
 俺は乾いた笑いを返す。
 俺の髪を乾かしてくれているのは、駅で声をかけてくれた彼女である。
 情けない事情を正直に話したところ、「それは大変でしたね」と同情してくれたのだけど、そのあと数秒考えた様子で、言ってくれたのは驚くべきことだった。
「良ければ、うちの店にいらっしゃいませんか。髪、洗えますよ」
 うちの店?

2/5
前のページ / 次のページ

第2期優秀作品一覧
HOME


             

               

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 株式会社ミルボン
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。


1 2 3 4 5
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー