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『晩秋』久保寺淳子

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 それから、私たちは2時間くらい話した。といっても、お互い相手の顔色を窺いつつ、言葉を慎重に選びながら話すものだから、沈黙の時間の方が多かったかもしれない。彼女と別れてから、ひとりで屋上に戻り、風に当たる。数人の子どもたちのキャッキャッとはしゃぐ声が、耳に心地よい。小さなゴンドラが9台ついているだけの観覧車も、子どもたちは乗れば世界を見渡せるような気がしてワクワクするのだろう。目を閉じると思い浮かぶのは、小野さんと最後に会った時の、私にすがるような必死な表情だ。夏の終わりに電柱にしがみつくセミの、あの感じだ。私があとで「子供っぽくてごめんなさい」と謝ったのも、今から考えると妙なものだ。まだ小野さんに聞きたいこと、教えてもらいたいことはたくさんある。今なら甘えて私の話もたくさん聞いて欲しい。けれど、私にも父親がいたんだという実感はちっとも湧いてこない。小野さんの笑った顔や厳しい表情を思い出して、自分と似ているところを探してみるが、よく分からない。私の世界は何も変わらない、今までと同じだ。ただ、心臓の
辺りだけが、まるで目の前の夕焼けの色味に染まっていくように少しだけ温まっている。

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