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『終わらないゴンドラ』柿沼雅美

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 祥子が言うと、恵美子がすぐに、いるわいるわと答えた。
 「うちの近所の人。もう60歳超えてるんだけどさ、奥さんが膝痛めたとかで介護ロボット、あ、AI介護さんね、家に入れたら、トイレやお風呂まで一緒だから奥さんにすっかり乙女心生まれちゃって、旦那さんよりAIさんが良いみたいになって離婚してたよ」
 えぇー、と私が言うと、祥子が、そのAIさん好みのタイプだったんじゃないの、と笑う。
 「そうみたい。なんかほら、10年前くらいだったらあぁロボットだなって分かるような人ばっかりだったけど、今じゃほとんど言われなきゃ人間とあんま違いないじゃない?体温が少し低いくらいで。しかも家庭用のは頭に浮かべた理想イメージを投影させて作るから、最初っから好みなのが家に来るんだわ」
 「あーなるほど。いんだか悪いんだか」
 「もしかして竜太も、普通に人間と結婚できないからイメージ投影で作ってもらったってこと?」
 祥子が口元を強ばらせて言う。
 私と恵美子は、さぁそこまでは聞いてみないと、と首を傾げた。
 私と祥子と恵美子と竜太は、大学で初めてできた友達だった。早々にサークルが合わなくてぼっちになってしまった私に、アニメが大好きで盛り上がっていた祥子と恵美子が声をかけてくれた。そして、入学式から行動をともにしていた友達がさっさと大学を辞めて残された竜太が授業でいつも隣だった。おなかすいたーと授業後にきゃあきゃあ話していた私たちに、竜太が、蒲田にいい餃子屋があるから行ってみたら?と言ってくれ、全員方向音痴だった私たちを竜太がしぶしぶ連れて来てくれたのだった。
 18歳から38歳になるまでの私たちは、世界の過渡期を生きてきたと思う。電柱は全て地下になり、スマホだったものはカラダのどこかの肌に映像が映るようになり、身分証明は免許証から眼球になり、服は店に行けばぴったりのサイズのタグが光って教えてくれる。銀行の窓口もスーパーのレジも介護も交通整理も全てAIになった。都会は透明なビルと整然と植えられた植物で洗礼されたが、蒲田にはまだ昔の名残があって、それを好きな人たちが毎日集まってくる。
 「おー」
 ガラスがゆっくり開き、竜太が手を振って入ってきた。
 来た!やっと来た!来た来た!と私たちはうるさいくらいに竜太を手招きする。
 「あらぁ竜太くん、大人っぽくなって」
 カウンターのおばあちゃんに、竜太がまた、おーと言う。
 「大人っぽいも何も半年たっただけじゃん、っつーか、表の看板のシステムそろそろメンテしたほうがいいよ、光量が落ちてる」
 そうねぇとおばあちゃんが返すと、竜太は慣れたようにロボットに、生ね、と言った。
 「みんな早くね?ってか蒲田変わらないのなぁ。東急のとこ、まだ犬の散歩してるじーさんいたよ。首輪にGPS設定すれば犬だって自分の早さで散歩して帰れるのになぁ」
 そう言う竜太に、祥子が安定の言い返がはじまる。

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