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『左手婆ちゃんと魔法の杖』秋之ノリ

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 この言葉は、このゴンドラに次に乗るであろう子供の大声でかき消された。

「えっ? なに?」

 妻に苦笑いを投げかけて、ゴンドラから降りた。惜しむように観覧車の降り場から屋上を一望し、その時の自分と同じ年齢になった勇太の手を握り、子の反対の手をにぎる由美と顔をあわせると、出口へと向かった。

「あなた、区民ホールでのリハーサルはあと三十分で始まるんじゃない?」
「ああ、そろそろ向かうとするか」
「私と勇太はホテルに一度戻ってから、六時には会場へ行くわね。明日はすぐにウィーンに出発だから無理しないことにするわ」
「そうしたらいいよ」
「パパ、今日も指揮するの?」
「ああ、父さんは指揮者だからな。この街の人達に魔法をかけに来たんだよ」

 自分はプロだから右手で指揮棒を持つが、左手は婆ちゃんの心を握っている。

 想いや感動とか形ないものは色あせない。でも人の顔とか、街の情景とか、大切なんだけど忘れたくない形ある物の記憶は年々ボンヤリとしてしまう。建物に入る時、振り返るとつぶやいた。

「俺が指揮棒を振っている限り、また蒲田へ来たくなる」

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