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『たんぽぽ』義若ユウスケ

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 ぼくはモテないサエない三流大学生で彼女は一流女子大学のキュートな女の子だった。ぼくらの頭上では葉桜がさらば春よとばかりに残り少ない花を豪快に散らしていた。まわりではバーの常連さんたちがぬるい缶ビールで酔っぱらって騒いでいた。ぼくはホッピーのソーダ割りを飲んでいた。ココちゃんがホッピーは飲んだことがないというので一口あげると彼女はおいしいといって笑った。そんなことをしながら緊張してどもりまくりながらもなんとか会話をつづけていたら思いがけず共通の趣味が見つかった。
「エイスケさんも落語が好きなんですね! よく聴かれるんですか?」とココちゃんが目をキラキラさせてきいてくるのでぼくは大声で叫んだ。
「それはもうしこたま!」
 ありがたいことに彼女のほうから「じゃあ今度よかったらいっしょに落語会にでも行きませんか?」と誘ってくれた。ぼくは飛びつくようにOKした。
 後日ぼくたちは大阪の繁昌亭で落語デートをした。いっしょに笑福亭の若手さんたちの創作落語を観てそのあと夕食を食べた。デートは成功したんだと思う。梅雨の時期にぼくたちは何度か同じようなデートを重ねた。ときめきに満ちた雨季が終わり濃緑強光蝉しぐれの初夏がやってきた頃にはぼくたちは付き合っていた。
そして月日はのんびりと流れた。キスとハグと愛のささやきに満ちた夏・秋・冬が終わってぼくたちは大学を卒業した。
 ココちゃんは四月から神戸の県立病院で看護師として働くことになっている。彼女の専門は終末医療だ。ハードな仕事だと思う。ココちゃんが精神的にピンチになった時にはぼくがしっかり支えてあげたい。
 一方ぼくは二月の頭からココちゃんより一足先にアレグレット・ポコ・モッソ百貨店で実践販売の仕事を開始した。こっちだってハードな仕事だ。外国からは日々大量に巨大なウインナーや苦すぎるコーヒなどが入ってくる。ぼくはそれを手際よく華麗に売りさばかなければならない。でないと百貨店が輸入商品の重みで沈没してしまうからね。神戸湾に。

 チャイナタウンでお昼ご飯を食べたあとぼくたちは電車で武庫之荘に移動した。駅から徒歩五分のところにぼくの住むアパートがあるのだ。アパートについてリビングでふたりでオセロをしているととつぜんココちゃんが泣きはじめた。
「どうしたの?」とぼくはきいた。
 勝負はややぼくの優勢で進んでいたのでこれのせいかもしれないとぼくは思った。ぼくが強すぎるからココちゃんが泣いてしまったぞ。しまった!
 しかしどうやらオセロは関係ないようだった。ぼくがホットココアを作って渡してあげるとココちゃんは一息に飲みほして「わたしそろそろ病院勤めがはじまるでしょう? もうエイスケと今日みたいに平日にのんびり遊んだりも出来なくなるんだなあって思ってさ。なんか悲しくなっちゃった」といった。ぼくはホットココアをもう一杯つくってあげた。彼女はすぐに飲みほした。

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