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『薄くて苦い』竹原達裕

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 人に喋らせておいて、本当に失礼な!
「いやいや、本心だって」
「ちょっと顔笑ってるし」
「そんなことないって」
 絶対に面白がってる・・・。
「まぁ友希、ずーっと横山さん推しだったもんね」
「アイドルかよ」
「でも、残念だったねぇ・・・結婚」
「言わないでよー。まだ立ち直ってないんだから」
 ズバッと言ってくれるなあ。
「もう二年前の話じゃん」
「そうだけど」
 目の前であんなに幸せそうな顔をされたら、誰だってヘコむだろう。
「・・・本当は、苦手なビールも一生懸命飲んで、何が何でもあの人のそばにー、みたいな、そういう感じだったらいいなーって思うんだけどさ」
 そんな盲目にはなれないんだ、どうしても。
「薄っぺらいんだー、結局私は」
 吹っ切れたような乾いた笑いがこぼれる。
「でも、結婚にはいっちょ前にヘコむんだ・・・」
 私はベッドに身を預けた。ふかふかのベッドの良い匂いに包まれ、私は寂しさを感じていた。
 ぽすっと、私の頭に梨花が手を置いた。優しい眼をしていた。
「なんだよ。散々面白がっておいて、いまさら慰めんのか」
「ごめんって」
「許さん」
「そっか」
 私はその手に自分の手を重ねる。冷え性に悩まされてる梨花の手は、ひんやり冷たかった。
「梨花は優しいね」
「何言ってんの。・・・友達じゃない」
「ねぇ、梨花?」
「ん?」
「ちょっと・・・ちょっとだけ、泣いていい?」
「いいよ」
「・・・恥ずかしいから、こっち見ないでね」
「何それ。・・・いいよ」

 
 夜。部屋の電気は消え、外の明かりが内部を薄く照らす。綺麗に整頓された、一人暮らしの1LDK。
 友希はベッドの上ですーすーと寝息を立てている。その寝顔を梨花がのぞき込んでいる。
「あー、もう、肩痛くなっちゃった」
 言葉とは裏腹に、寝顔を見る梨花は優しく微笑んでいる。
「まったく、のん気に寝てんなよな」
 梨花は穏やかに眠る友希の頭を静かに撫でると、
「馬鹿だなあ・・・私」
 その顔に自分の顔をゆっくりと近づけ、
「おやすみ」
 唇にそっとキスをした。

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