こう、良くわからないけど、さっきお店で飲んでいたホッピーと比べて、風味?みたいなのが違う。・・・気がする。
「テキトーに言ってない?」
「失礼な!」
どうやら梨花は私のことを子供だと思っている節があるらしい。・・・まあ、実際にその通りなのだが。
「ごめんごめん。お店で飲むと、大体どこも似たり寄ったりのお酒使うからさ、ちょっと違うのも試してみたくって。焼酎だけじゃなくて、ウィスキーとかウォッカなんかも合うんだー」
「へー、想像つかない」
結構凝り性なところがあるんだよな、梨花。でも良いな、そういうこだわれる趣味みたいなの。私も何か始めてみようか。
「・・・そういえば友希、会社の飲み会だといっつもホッピーだよね」
「え?あぁ、うん」
急に話題変わったな。
「え、なんで?」
梨花は顔をすいっとこちらに寄せて、大きい眼で私を見る。・・・はて、私がホッピーを飲む理由?それって確か・・・あっ。
「あー・・・えっと、なんでかなぁ」
私はふいと視線を逸らした。そうだ、確かあの日からだった。これは知られる訳には・・・。
「何そのごまかし」
私のとっさの行為は、むしろ梨花の知的好奇心を掻き立てたようだった。梨花、この手の話好きだったんだ。意外にも。
「別にー」
「んー、怪しい」
探偵は顎に手を当てながら私の表情を観察している。こ、こいつ、楽しんでるな。このままシラを切り通したいところだけど・・・。
「・・・もしかして、横山さんと関係ある?」
「なんでわかったの!?」
「いや図星かよっ!」
「しくじった」
名推理に思わず反応してしまった。
「やっぱりー。友希、サワーとか甘いお酒好きだったから、おかしいと思ったんだよね」
「良く見てるなあ・・・」
こういう観察眼が、仕事にも活かされているのだろうか。私だったら絶対に気づかなかっただろうな。
「で、何があったの?」
「えー、まだ聞く?」
「いいじゃん、教えてよ」
こういう時結構しつこいんだな、梨花・・・。この流れでだんまりは出来ないか。私は観念して口を開く。
「・・・横山さんと、初めて一緒に飲みに行った日のことなんだけど」
「ほう」
「『最初、何飲む?』って聞かれて。あの人ビール党じゃん。でも、私苦手だから」
「うん」
「そしたら、ホッピーならどうかって、勧めてくれて。飲んでみたら、やっぱりちょっと苦手だったけど、でも、ビールよりは飲めるなあって・・・もしかしたら、これ飲んでたらまた誘ってくれるかもって・・・。だから、横山さんがいる飲み会は、ちょっとだけ頑張って・・・」
最後、ちゃんと声が出ていたか自信がない。漫画だったら私の頭から湯気でも出ていたことだろう。
「健気ぇ」
「バカにしてるでしょ、さっきから」