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『薄くて苦い』竹原達裕

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「お前も新人の頃、ミスばっかだったけど、仕事は投げ出さなかっただろう。特別なことをする必要なんてない。その時の自分をちゃんと持ってりゃいい」
「・・・はい」
「まあ、だから大丈夫だ。気にすんな」
 そういって横山さんは私の頭をガシガシと撫でた。
 新人の時以来だな、横山さんに撫でられるの。気を、使ってくれたのかな。やっぱり優しいな・・・。
「ありがとうございます。頑張ります」
「おう。・・・なんてな。いや、良くないな。おっさんになると、話が説教臭くなって」
「なんですかそれ。そんなことないですよ」
 残ったビールを一気に飲み干す、その横顔を私は見る。カッコいいことを言うとすぐ照れるのだ、この人は。
「この前、嫁さんに言われたんだよ。『あなたはお酒を飲むとすぐ説教臭くなるから気をつけなさい』って」
「そうなんですか」
 この照れ顔も、私が今まで見た他の顔も、私がまだ見たことのない顔も、この先ずーっと見ることが出来る人がいるのだ。
「『特に今の若い子なんてそういうの敏感なんだから、気をつけなさいよ』って。言うことキツいんだよな」
 幸せそうな笑顔で、横山さんは言った。
 ・・・あーあ。
「お、相原もグラス空いたな。何か飲むか?」
 私って、本当に子供だ。
「あ、じゃあ」
 でも、やっぱり、
「ホッピーを」
 ビールは苦くて嫌いだ。

 
「はい、じゃあ今月も張り切っていきましょう。また来月、楽しく飲み会が開けるよう。解散」
 部長の大きな声で飲み会は締められた(驚くべきことに、部長は終始ハイペースで飲み続けたにも拘わらず潰れることなく今日の飲み会を生還したのだった)。
「お疲れさまでしたー」「この後どうするー?」「二次会?俺、店に連絡しとこうか?」「もしもし?寝てた?うん、今帰るとこ」
 解散の音頭とともに、二次会に行くなり、帰路につくなり、各々動き始める。
さて、私は今日この後どうしようか。何とはなしに周りを見ていたら、二次会集団に居た一人がこちらに歩み寄ってきた。
「相原さん」
「はい」
「相原さんも二次会どう?」
「二次会ですか?」
 おっと、正直誘われるとは思っていなかった。
「うん、もしよければ」
「えっと・・・すみません。今日はこの後予定があって」
 そして断ってしまった。
「えー、そっか」

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