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『父と娘のホッピー戦争』オガワヤス

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 智子に制され、袋の中を確認した。手紙が入っていた。
「嘘だろ?」
 恐る恐る手を突っ込む。
「もう、早くしてよ」
 手紙をつかみ、そーっと開いた。しおりの字が見え、思わず閉じた。読みたいが、恐くて読めない。勇気を振り絞るが、また臆病になり、明彦はその場で何度かジタバタした。
「もう!」
 智子の苛立つ声が聞こえてくるが、明彦にはこれがなかなか難儀だった。
その時だった。
 しおりがバッと手紙を奪い取り、広げて明彦の顔の前に押し付けた。
「うわ」
 文字が見える距離まで後ずさりする。自然と手紙を目で追っていた。

『誕生日おめでとう   しおり』

 と、一言だけ書かれていた。明彦が読み終えたのを見計らい、しおりは手紙を閉じて袋の中に突っ込んだ。その足でテーブルのホッピーを手に取り、キッチンへ向かった。グラスに氷と焼酎を入れ、ホッピーの栓を抜き、グラスに注ぐ。それをテーブルの上に乱暴に置いた。睨むように明彦を見ている。
「はい」
「あ、うん。いただきます」
 明彦は促されるまま、しおりが作ってくれたホッピーを飲んだ。
「誕生日おめでとう」
 心がまったくこもっていないが、明彦には十分過ぎるほど届いた。
「ありがとう……ありがとう、しおり!」
 しおりは何も答えず、ソファーに戻ってテレビを観始めた。
「あなた、おめでとう」
「ありがとう!」
「ママ、言われたとおりやったかんね! 来月からお小遣いあげてよね! 約束だかんね!」
 智子が耳元で「あれ、照れ隠しだから。そんな約束してないから」と囁く。明彦は嬉しくてたまらなくなった。
「最高の誕生日だよ! パパ、明日からまた仕事頑張るぞー!」
 高らかに宣言し、しおりが買ってくれたホッピーをグラスに注いで飲み干した。人生で一番うまい酒だ。田代さんに報告しなくちゃ。明彦は空いた瓶を流しでゆすぎ、棚に飾った。テーブルからそれを嬉しそうに眺める。
「やっぱこっちかな」
 と、瓶の位置を変えた。その横には、家族三人で映った写真が並んでいる。

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