メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『父と娘のホッピー戦争』オガワヤス

  • 応募規定
  • 応募要項

 明彦はとっくに戦意を喪失し、二人を眺めるだけだった。
「あいつうざいんだけど」
「こら! パパもしおりと話したいんだよ」
「一っ言も話したくないんだけど」
 明彦は何か言おうとしてみたが、のどにつっかえて出てこない。
「はあ」
 しおりが吐き捨てるようにため息をついた。
「あのさ、ママ。あいつの生命保険ていくら? いくら入ってくるの?」
「なにその質問! 教えてないわよそんなの」
「教えてよ」
「なんでよ」
「知りたいじゃん」
「なんで知りたいの」
 そんなに疎ましいのかと、明彦は申し訳なくなった。
「まあでも、なん千万とかでしょ? 早くおりないかなー」
「なんてこと言うの!」
 語気を強めてくれた妻の想いが嬉しい。それだけで俺は幸せだ。そう思おう。明彦は力なく妻をなだめるしかできなかった。まあまあ、と。いいよいいよ、と。

「大丈夫?」
 田代の声に明彦はハッと我に返った。
「すいません」
「何があったか知らないけどさ、飲もうよ」
「ですね」
 ちょうどそのタイミングで追加注文したホッピーたちが届く。二人はあらためて乾杯をした。
「頑張ろう!」
「はい!」
 明彦は悲しみを振り払うように、勢いよくホッピーを飲んだ。
「うまい! ホッピーうまいですね!」
「でしょ!」
 自分が勧めた酒が褒められて田代もご満悦だ。
「こんなうまいのに、体に良いんですね」
「家でもさ、大人連中はみんなホッピー飲んでる」
「へー」
 すると田代が再び語り始めた。
「家でホッピー飲んでたらさ、薫が『一口ちょうだい』って言ってきたの。『どんな味なの?』って。『飲んだことないのにパパに勧めちゃったからさ』って。俺のグラスをぶんどって飲んだの。そしたらまさに、今の池本さんみたいに『うまい!』って。あれは飲兵衛になるなあ。俺の血を引いてる」
 そう言って嬉しそうに明彦を見た田代の顔が一変した。明彦が睨むようにこっちを見ていたからだ。
「ちょっと池本さん、なんちゅう顔してんの?」
「田代さん、娘に『一口ちょうだい』って言ってもらえたんですか?」
「そこが引っかかったの?」
「もうホッピーがうまいとか、どうでもいいんですよそんなことは。なんで娘に『一口ちょうだい』だなんて言われるんですか? 俺、一回も言ってもらってないですよ」

4/9
前のページ / 次のページ

第6期優秀作品一覧
HOME

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 ホッピービバレッジ株式会社
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。


1 2 3 4 5 6 7 8 9
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー