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『断然ホッピー』中村克也

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「ビールはビールでいいもんだ。うまいもんな。でもな、ホッピーはホッピーで別のものとしてうまいんだぞ、って勧めるべきだったなぁ。」
「なぁ、知ってるか?もともとホッピーはビールの代用品だったんだぜ。昔のビールは高かったから、その代わりってことだったそうだ。」
へぇ、そうなんですか。
「ところが、始まりはそうだったかもしれないが、ビールに手に届くようになっても、ホッピーはホッピーとして、独立した飲み物として好んで飲まれるようになったんだ。代用品じゃなくてな。俺なんかまさにそうだな。ビールも、日本酒も、ウィスキーもなんでも選べる。それぞれ好きだしな。けど、ホッピーが飲みたい、いや、ホッピーじゃなきゃダメな時、断然ホッピーな時、があるんだな。」
断然、ですか。なるほど。ちょっと飲んでみたくなりました。
「いいんだよ。無理しなくて。ただ、ビールみたいなもんだっていうのは、訂正してお詫び。ホッピーに申し訳ないことした。」
僕じゃなくて、ホッピーに謝ってますけど、課長。
まぁ、でも、あれ?なんて頼むんでしたっけ?ホッピーセット?ください!
気づいた時には大きな声で、大きく手を振りながら、注文をしていた。

 
あれから12年。

梱包材業界にとっては激動の12年だった。世界的な景気後退の影響を受けての大幅な売り上げ減。それをきっかけとして、製紙業界で大型再編が起こった。紙つながりで製紙会社を親会社や株主とする会社が多い梱包材業界にも再編の波が押し寄せ、勤務先も2度の合併を経てやっと落ち着いた。リストラもあった。
足元ではネット通販の拡大もあってダンボール需要が増え、売り上げを伸ばしている。緩衝材もほとんどが紙製になりそちらも順調。最近ではより大型の自動車部品向けまで紙製の緩衝材が登場し販路も広がっている。

私にとっても激動の期間。2度の異動を経て、今年課長になった。慣れない課長職。歴代の課長の顔が思い浮かぶことも多い。とりわけこの会社に来て最初に仕えたあの課長のことを最近よく思い出す。全てを教えずに考えさせるための一言とか。いまになって分かるが、あれは難しい。
そうそう、例の特定の飲料をうまそうに飲む姿も。

「じゃぁ、みなさん生でいいですか?」
月末恒例の課の飲み会。ひとまわり年の離れた、最若手の部下が聞く。
私は手を上げながら言う。
おれ、今日は、断然ホッピー、だな。

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