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『二度目のクリスマス』朝倉みず

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 私たちは⼀緒にエレベーターに乗り込み、会場に向かった。エレベーターを降りると、すでに何⼈かの⼈が受付に並んでいる。誰だっけ?と思う⼈もいるけれど、⼀⾒してすぐに思い出せる⼈もいる。私は⻫⽊くんと受付を済ませ、会場の中に⼊った。席は指定されていなかったので、そのまま⻫⽊くんの隣の席に座った。
 間もなく同窓会が始まろうとする時、⼆つ隣のテーブルから⼿を振っている⼈物が⾒えた。眼鏡をかけていたので⼀瞬わからなかったけれど、印象的な⼋重⻭で智ちゃんだとわかった。当時の⾝体つきの⾯影はすっかり無くなり、ほっそりと美しい体型に変貌していた。
 天井に設置されたスピーカーからクリスマスソングが流れ、舞台の袖の⽅からマイクを持った⼥性が現れた。あまりの変わってなさに驚いた。原賀先⽣だ。
「メリークリスマス!」
 原賀先⽣は右⼿を頭上に⼒いっぱい広げながら、びっくりするくらい元気な声でそう⾔った後、「それでは授業を始めます」と、冗談を⾔って会場の笑いを誘った。
「今⽇はみなさんに会えてとても嬉しいです。みんな、本当に素敵な成⼈になりましたね。先⽣はみんなの分と同じだけ歳をとってしまいましたが、まだまだ若々しく頑張っています。今⽇は懐かしい話をみんなでいっぱい語り合って、⼈⽣の新たな出発の⽇にしましょう。それではみなさんの成⼈をお祝いして、乾杯!」
 先⽣がシャンパンの⼊ったグラスを掲げると、会場のクラスメイト全員がそれに呼応した。私も先⽣の⽅に向かってグラスを掲げた後、隣の席の⻫⽊くんや近くに座った何⼈かの旧友と乾杯を交わした。
 それからみんなといろんなことを語り合った。⼤学⽣、専⾨学⽣、浪⼈⽣、警察官、アパレル店員、家業の畳屋。それぞれがそれぞれの⽅向に⼈⽣を歩み、喜びを⾒つけたり、悩みを抱いたりしていた。でも、共通して⾔えるのは、みんな変わったようで変わっていないということ。誰もが当時の⾯影を残していて、誰と話をしても、まるで当時の教室で話しているような錯覚に陥る。そんなクラスメイトというものの存在がとても貴重に思えた。
 智ちゃんも⼤学に通っていて、今は⼩学校の教員免許を取ることに励んでいるということだった。辿々しい⼝調で「セイジン」と⾔っていた智ちゃんは、⽴派な「成⼈」になっていた。そのことがとても嬉しく、同時に、とても勇気付けられた気がした。
 しばらく歓談の時間が続いた後で、原賀先⽣が再びみんなの注⽬を呼びかけた。
「では、みなさん。あのクリスマスに⽇に集めたものを覚えていますか?」
 きた、と私は内⼼思った。
「皆さんから預かったタイムカプセルを今からお返しします。これは当時のみなさんがサンタクロースになり、今の⾃分⾃⾝に贈ったクリスマスプレゼントです」
 先⽣はそう⾔ってホテルのスタッフに合図をした。すると、別のスタッフが舞台袖から⼤きなテーブル引いて現れた。テーブルの上には、ぬいぐるみ、ロボット、⼿作りの⼈形、ポーチ、T シャツ、お⾯、漫画本、瓶、封筒などなど、様々な物品が並べられていた。
「⾃分が贈ったものがどれかはわかるはずです。それでは前に取りに来てください。メリークリスマス!」
 みんながぞろぞろと舞台の⽅に歩き出したので、私は少し待ってから席を⽴とうとしたけれど、後に残ると余計に⽬⽴ってしまうような気もして、⼼持ち早めに舞台前⽅に向けて歩み出した。

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