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『詰むや詰まざるや』乃木正彦

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 長身の方から冷静な視線が飛んでくる。
「いやー、それが分からなくて……」
 と営業は明るい声で話す。
「中段玉ですかー、これは手強そうですねー。三手詰みでも、難しいやつありますもんねー」
 とこちらは二人に話しかけた。
「江戸時代に作られたやつとか、なんか聞いたことありますね」
 と細面の方が応える。
「よくご存じですねー。後は詰め上がった形が文字になってるとか、全部の駒が最初から置かれているとか、マニアックな世界ですね」
 とこちらから返すと、技術の方は頷いた。
「いや、これ、解いてもらえたら、飲んではるホッピー奢らしてもらいますわ」
 と営業は笑顔で提案してきた。
「いやいや、そんな……」
 とこちらは悪い気はしないものの、既に頭はその問題を解くことに動き始めている。
「詰めへんのに同じ手ばっかり考えてもうて……」
 と小柄な方は嘆いた。
「そういうもんですよね」
「なんか人間の脳ミソって、そうできてるんでしょうね」
 とまた丸顔。
 そのとき、大将の叫び声が聞こえた。
「皆、焼き鳥五本で二百円だよ! いつもより百円も安いよー。大丈夫かよ!」
 こちらの隣にいる中年の真面目そうな二人組の一人がいった。
「安くしても、誰も注文しないね」
「需要曲線が垂直に立っているということですね」
 とその相方が明るく応えた。
「そうそう、値段を下げても売れないという……」
「ということは、ここの焼き鳥は高級品と同じかー」
 その二人は笑い合った。
「まーとにかくお近づきの印に乾杯を」
 と正面の営業から申し出を受けた。
「こちらこそ」
「よろしくお願いします」
 と三人でジョッキを合わせた。
 しばらくすると――。
「そろそろ、わてら、行きますけど、あきませんか……」
 と営業の方が済まなさそうに声をかけてきた。
 気づくと、半時間は経っていた。恐ろしいものだ――。
「堂々巡りの仲間入りをしてしまったようで……」
「ダメでしたか……」
 と細身の方は腕を組んだ。
「一応、全部の王手を考えたつもりなんですけど……」
「いやー、なんか迷惑をかけてしもうて……」
 と太った方は立ち上がった。
「済みません、お力になれなくて」
 とその紙を営業に差し出した。

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