「お、俺、お守りみたいに毎日これを持っていました。俺、気が利かないし、なによりあなたからしたらまだガキだし、もしかして馬鹿なこと言って泣かせちゃうかもしれないけど、でも、
世界中で、こんなに毎日祈るようにホッピーの王冠を握っていたの、きっと、俺くらいしかいないって思いますっ」
ぜぇぜぇとなぜか息切れしながら言い切ると、まゆさんは驚いた顔をしてしばらく黙った。それから少し笑ったかと思うと、顔を覆って泣き出したので、俺は自分の顔がサッと青くなるのを感じた。
「……それ、ちょうだい」
「え?」
まゆさんは俺の手にそっと触れてホッピーの王冠を取った。唖然として見つめていると、本当に呆れたように、けれどどこか嬉しそうに「ばかだねえ」と一度言って、
「ばかだねえ」
と、やっぱりどこか嬉しそうに、もう一度言った。
俺は、なぜだかよくわからないが、もう大丈夫だ、と思った。まゆさんも、俺も。そうして二人、会えなかった時間をうめるようにお酒を飲んだ。
まゆさんが手のひらで転がす王冠が、きら、と光った。それを見て俺は、あ、指輪、買わなきゃ、と、酔って少しぼんやりとした思考の片隅でそう思うのだった。