「良いと思う。嬉しい」
「ありがとう。お母さんも嬉しい」
「うん」
「お茶でも買おうか?」
僕とお母さんはお茶を三本買ってコンビニを出た。
車の外でタッくん、いや、お父さんは笑って待っていた。
「おー、間に合って良かった」
「ありがとう」
タッくんが照れながら両手を合わせた。
「もう一回、言ってもらっても良い?」
「何を?」
「さっきの」
改めて言われるとまだ恥ずかしい。
「お坊さん?」
コンビニのドアが開くメロディが鳴って鈴を片手にお坊さんが出て来た。
「もっと手前のやつ」
「オットセイ?」
「オウオウオウ、オウ!」
オットセイを積んだ軽トラが横に止まった。
「もう少し手前」
「バッハ?」
バッハが出て来て『G線上のアリア』を奏で始めた。
このコンビニの駐車場はエラいことになっている。
「もう一つ最新の」
タッくんは手のひらで『来い』みたいな仕草をした。
僕はお母さんの方を見やってから正面を向いて叫んだ。
「お父さん!」
お坊さんの鈴の音、オットセイの鳴き声、バッハのメロディが最高潮に鳴り響いた。
「はい!」
お父さんが声を張って返事をした。
再び僕は叫んだ。
「お母さん!」
「はい!」
お母さんが大きな声で返事をして、二人が息ぴったり同時に叫んだ。
「ユウくん!」