9月期優秀作品発表
ARUHIアワード2022 9月期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品18作品です。
『淵上家の義理族』
河村みはる
(②私の「家族」)
義母との静かな戦いを投稿したインスタが話題となっている人気モデルの翔子。夫を亡くした女三人、相容れないがどこか通じ合っている不思議な暮らし。家に入る、ということを深いところで共有している女たちはきょうも美しい諍いを繰り広げる。
『イッヌ』
小田虹里
(②私の「家族」)
私と旦那は同性。その間に子どもは生まれない。その代りに私が手にしたのはゲーセンの景品。秋田犬のぬいぐるみ、Mまる。一緒に生活するうちに、Mまるに服も着せて大切にした。せっかくのおめかしに、旦那と私はMまるを連れて岐阜県高山本陣へ遊びに行く。そこで秋田犬好きのおじさんと出会った。
『ふやけてもいいですか?』
小松波瑠
(①新しい生活)
高崎舞(33)は若くしてベンチャー企業の執行役員となる。コロナをきっかけに仕事がフルリモートになり、東京を離れ祖母が暮らしていた只見川近くの家で一人暮らしを始める。ハードな仕事をこなす彼女は共同温泉に通うという新しい楽しみを見つける。新しい地で彼女は自分を見つめ直していく。
『一年生家族』
柑せとか
(①新しい生活)
とある事情から、都会の街で新生活をスタートさせた今田(こんだ)一家。幼い娘と息子は新しい小学校へ、父は新しい会社へ、母は新しいご近所回りへ向かう。慣れない新天地に戸惑うばかりの家族は、うまく街に溶け込めるのだろうか?
『母の再婚は溶き卵』
モリヤマトシナリ
(②私の「家族」)
例のウイルスのせいで生活苦に陥った大学生の「僕」は、下宿を引き払い実家に帰る事にした。だけど実家には、母の再婚相手「ヒロさん」がいる。ほとんど会ったこともなく、人柄も知らないヒロさんと、どうやって「家族」として暮らしていこうか。悪い人ではなさそうだけど――
『家族と私と押入れと』
幹戸良太
(①新しい生活)
がらんとした室内を見回す陽子は 1 年前の事を思い出していた。団地の狭い部屋に家族四人で住む陽子は自分の部屋が欲しかった。願いを叶えるため、押入れの中を整理して一人分のスペースを作ると、そこを部屋にする事にした。鬱陶しいはずの存在だった家族が、受験を機に陽子の気持ちに変化が表れる。
『ハハダンジョン』
宮沢早紀
(①新しい生活)
貴恵はマンション購入に際し、ローンを組もうとしていることを母に打ち明けるが、強く反対される。人生の中で何か転機を迎えるたびに母と対立してきたことを貴恵は振り返り、母との関係について頭を抱えるが、夫の俊一から思わぬ形でヒントを得て、前向きに捉えられるようになる。
『Feel』
遠藤倉豆
(①新しい生活)
スペックで選んだ妻に浮気され、離婚を機に過去を棄てようと考えた昌史は、条件で選んだマンションにある物を全て棄て、心がfeelする物件を探すことにする。しかしfeelは中々訪れず、昌史がfeelしたのは電車の中で本を読む女性だった。彼女が読本にはT図書館蔵の印。Tに向かった昌史は、図書館に繋がる路で入居者募集の寂れた看板を見つける。
『1+1=』
綿恭平
(②私の「家族」)
終活の為に写真整理をしてアルバムにしようと考えた私。約 60 年分に及ぶ写真の整理を行っている中で、夫と娘、そして孫との思い出が溢れ出してくる。柔和な笑みの夫、算数の苦手だった娘……。二人から三人、三人から四人と広がっていく家族を表すアルバムには、 1+1=という名前がぴったりだった。