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『前髪は瞳の少し上で』三戸栄

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再会

「オーナー。オーナー指名で予約が入ってます」
受付の田中未来が、サロンに着くなり声をかけてきた。
「えっ、俺に?」
美容室のオーナーである大久保慎也は、四十を超えたあたりからめっきり新規のお客さんが減り、ご家族の紹介でもない限り、初めての方を担当することはなくなっていた。
「誰の紹介だろう?」
「さぁ、特にご紹介者さまはいらっしゃらないみたいでした。ご年齢もお若いみたいでしたし、どこかのキャバクラの子じゃないんですか(笑)」
田中はいじるような眼で大久保を見た。
大久保は飲めないたちではないが、業界の付き合いとかスタッフとの食事会以外、繁華街にはあまりいかない。
「まあ雑誌か何かでも見たんだろ、こんなおじさんと知ってドン引きしなきゃいいがな」
大久保は苦笑交じりで言うと、今日の予約表をチェックし始めた。

この日も外は雨が降っていて、九州の方では豪雨災害の危険性が高いことを、テレビのニュースが流していた。
サロンは雨にもかかわらず混雑していて、大久保は朝の田中とのやり取りも忘れ、サロンワークをこなしていた。

「いらっしゃいませ、ご予約の浜田様ですね、お待ちしておりました」
田中がフロントでお客様の対応をしている。
白いブラウスにモノトーンのチェックのスカート、茶色のローファーを履いた、まだ二十歳にならないと思える女の子が立っている。
浜田という女の子は受付でカルテを記入しながら、ちらちらと店内をうかがっているように見える。
ふと大久保と目線があった。
気のせいかもしれないけど、大久保には女の子がかすかにほほ笑んだように見えた。

「浜田麗奈さん、こんにちは。予約をいただいた大久保だけど、俺でいいの?」
カウンセリング席に通された女の子に大久保が声をかけた。
「はいっ!お久しぶりです。よろしくお願いします」
一瞬、えっ!となった大久保は、自分の記憶の中を高速で探してみるが、思い当たるふしがない。
周りのスタッフも手を動かしながら興味津々で耳をそばだててるのがわかる。

そんな大久保の困った顔を見とがめて浜田は言った。
「覚えておられないのは当然です。もう十年も前になりますから。大久保さん、豪雨災害の時ボランティアで来られたでしょ?」
あっ!あの時の女の子。

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