SOMPO認知症エッセイコンテスト

『目標は認知症バレエ団1期生』元永まさえ

若年性認知症である私の夢は「認知症バレエ団」に入団し、お稽古をし、舞台に立ち、お客さまと感動を共有することです。
「認知症バレエ団? そんなバレエ団あるの?」と皆さん思われることでしょう。
私も聞いたことはなかったのでまず検索しました。
認知症予防のためにダンスがよい、とプログラムに取り入れている施設や、老化予防のためのシニアバレエクラスは思ったより多く、心強くうれしく思いました。
が、老化予防、健康のためのバレエは私のメインの願いではありません。私は自分の健康と長生きのために踊るより、私の想いを誰かと共有するために踊りたいのです。その副産物として健康増進、認知症状の進行が鈍化しましたら、それは+αのご褒美、神様からのがんばれコールだと、大感謝してありがたくいただきますがメインの望みは健康、長生きではありません。私の願いはたくさんの方たちとの「感動の共有」です。知らない誰かと知らない人同士のまま、同じ思いを体感し、その感動を共有する。
言葉を尽くしても思いが伝わらないことが多い日常生活の中で、舞台や作品は、オアシスだとおもいます。
今まで客席にいて舞台のダンサーと心がつながったと実感したことが数回あります。その時の幸福感!隣の席の方も同じものを感じたらしく休憩時間に感動を語りあえたのも大切な思い出です。
そのような表現はプロの凄いダンサーにしかできないことと考えがちですが、認知症バレエ団が実現すれば、多くの認知症に苦しむダンサーたちが、認知症のためにダンスをあきらめ、あふれる思いを閉じ込めた人たちが踊りを通して、「感動を共有する幸せ」を取り戻せるのではないでしょうか。認知症バレエ団がないなら認知症に関わる当事者、支援者の皆様で認知症でも身体障碍者でも健常者でも精神が不安定になりがちな方でもバレエを通して、生き生きと自分を発信し、またある人は他の誰かの思いを受け取り、やがてたくさんのオアシスが街中にあふれ、虹のようなア-チがかかることを、私は夢見ています。
昨日認知症の定期診察に行きました。何より苦手な心理テストでくたくた。テストを受けている最中でも、私の脳はさらに縮んでしまったのだなと自覚せざるを得ないような返答しかできない私。悲しい。 仕方がないことと納得していても気持ちはちょっとだけへこみました。
縮んだ脳は、急な血流にびっくりしたのか頭痛もガンガンガン。それでも夕方には台風余波の大雨の中、自転車で片道40分の道のりをバレエのお稽古に行きました。今の私の心を立て直してくれるのはバレエだけだととわかっているから。雨が冷たくても自転車をこぐ。一心に漕ぐ。

だって私は認知症バレエ団の団員になるのだから、お稽古をサボっている場合じゃありませんもの。