2009年1月義父が他界してから、週1・2回義母とスーパーへ買い物に行くようになりました。後に考えるとその頃から認知症が始まっていたのかもしれません。
ゆっくり何度も同じ場所を回っていたのは食品を吟味していると思っていたのですがもしかしたら何処に何があるのか分からず捜し歩いていたのかもしれません。ほぼ毎回同じ食材を購入するのは、糖尿病を患っていた義父の食事に神経を使っていたので義父が亡くなってからは自分の好きなものを食しているのだと思っていましたがもしかしたら作り方を忘れ、手軽に焼くだけ、そのまま食せるものになっていたのかもしれません。でもその頃の私にはわかりませんでした。
6月に入ったある日、朝食がそのままお味噌汁の鍋も出しっぱなし、クーラーもつけず窓を閉め切って汗だくになっている義母を見て「もしや」と思いました。
このまま一人での生活は厳しいと思い主人に、日中のヘルパーさんを提案しましたがあっさり却下、環境の変化が認知症の進行を早めるので生きる活力になる『誰かのために何かをする』ことがあれば義母が生活に張り合いがでるのではと思い一人っ子の主人に『実家でお義母さんと暮らしたら!』と提案しましたがそれもあっさり却下され結局すぐさま同居となりました。
我が家に来た義母に新しく台所のこと置き場所などを覚えてもらうのは無理かなと勝手に判断し台所仕事は私がしましたが料理上手な義母に頼って無理言ってお願いしていれば進行が少しでも緩んでいたのかなと後悔しました。
【共に生きる】とは個人を尊重し、家の中や職場での仕事の役割があり共に助け合い感謝し笑いあえる関係でしょうか
同居をするにあたって認知症に関する書籍を3冊読みましたが、実際義母の言動に主人も私も戸惑い理解できないことが多々ありました。そんなある日ケアマネージャーさんの「ご本人はもっと困惑されているのですよ」の一言にはっとし、それからはわからないなりにも義母の心の葛藤を考えるようにしました。
枕をごみ箱に捨てていた義母・・・ありゃあゴミじゃろ?
義父へのお供えをすぐに頂いていた義母・・・お腹すいたんじゃもん
新聞紙を細かく破いて山にしていた義母・・・もう読めんねえ
トイレットペーパーホルダーの芯を隠した義母・・・誰が隠したんかねえ
毎度笑えるハプニングを私は『未知との遭遇』と命名しました。
パジャマの上着の袖に足を通し「こりゃ小さいよ」と言った義母
「お義母さん、よう食べるけえ大きゅうなったんじゃね」と私が言うと
「ご飯が美味しいけえね」といたずらっ子のようにニコッと笑う。
“わたしのご飯”“お義母さんのご飯”のメモ用紙を置いていても2人分食べてしまった義母寮生活をしている娘に電話で話すと「おばあちゃんは一人で留守番してるんだから「わたしの」は「おばあちゃんの」よと。たしかに、、、
特に印象に残っているのは、テレビを見ていた義母が「奈緒美さん、NHKの時刻が間違ってる。私の時計が正しいんよ。」というので私は受話器を持ち電話をかけるふりをし「NHKさんですか、うちのおばあちゃんが時刻が間違ってることに気づきましたよ」と独りで話し、義母に「お義母さん、NHKさんがありがとうございましたって言ってましたよ」と伝えると何とも誇らしげでした。
元気な時は想像すらしていなっか認知症。おせちの雑煮、お彼岸のおはぎ、ほんのり甘いささげご飯、土用の丑の日暑いなか庭の七輪で自家製タレで焼いた鰻と骨、しめの鰻茶、真夏の鯛そうめん、里芋の煮っころがし等々きりがないほどの義母のレパートリー。
家族の為に時間を惜しまず手間暇かけ美味しい料理を作ってくれた義母。
認知症介護は決して笑えることばかりではありません。不可解な行動をとり言動を否定すると機嫌を損ね暴れだす人もいます。が、なりたくて認知症になる人はいません。
義母がグループホームへ入所したのち私は義母の介護の経験を誰かの役に立てられないかと自身の経営するカフェで3年間認知症カフェを開催し、地域の方々への認知症への周知と認知症患者の方とそのご家族が気軽に出かけられる場、ほっとできる場にしたいと考えました。過去に義母と外食した際に、始めは箸を使う義母が途中から手で食べ始めたり、隣りの私の食事も食べ始め周囲から異様な視線を感じたことがきっかけでもあります。
認知症カフェでは不思議なもので認知症患者のほとんどの方がしゃきっとされ初対面の私の質問にきちんと答えてくださいます。特に若かりし頃の質問には恥ずかしそうにでも少し自慢のように嬉しそうに笑顔で答えてくださいます。そのさまにご家族が驚かれます。そんなワンシーンを垣間見ることが出来たのは義母のおかげ様と思っています。
認知症患者の方の状態にもよりますがどんどん外出して沢山の方に出会い刺激をもらって笑顔になっていただきたいと思います。
義母が車椅子になってから車椅子でスムーズに入店できる店舗が少ないことに気づき、段差のないスロープ入口を地域店舗にに呼びかけています。これから益々増加するであろう認知症患者の方とそのご家族が気軽に出かけられる場所が増え楽しく過ごせることが望ましいですね。