いつ振りだろう―
恐らく、二十年は経つんじゃないかな、最後に集まってから。
免許取りたての俺が運転する車で、国道沿いのファミレスで飯食って、その後カラオケに行って。隣の部屋の女の子達が可愛かったから声をかけてみたら、ヤンキーの男友達がやって来て慌てて逃げた記憶が蘇る。大学卒業して、やってることがガキみたいだな、なんて笑い合ったけど、今になって思えばそんなもんだよ、二十二、三歳の頃って。
気が付けば四十三だぜ。仕事は長続きせずに点々としてさ。やっと落ち着いて安定すると思い始めた頃に倒産だって?全くふざけるなよ。これじゃあ、いつになっても結婚すらできやしない。
これといって具体的なことなんて何も考えてなかったけど、あの頃の俺はただ漠然と明るい将来を思い描いていたんだ。まさか、こんな人生を送っているとは想像してなかったよ。
春田、夏目、秋元、そして、俺、冬木の四人が出会ったのは高校一年の頃だった。嘘みたいな話だけど、四人揃うと『春夏秋冬』で、最後に俺が仲間に入った時には「あと一人探してたんだよ、冬木君が仲間になったら完成だ」なんて、ハルが目を輝かせて意味不明なことを言うから、何事かと思いきやそうゆうことだった。
それでも、ただ名前に季節が入っているという共通点だけじゃ友達関係は続かない。互いに気の合う仲間として認め合えていたからこそ、大学を卒業して就職する頃までよく集まっていた。それからは全員が揃って集まる機会が無かったけれど、別に仲違いがあったわけではない。ただ、皆んな仕事が忙しくて時間が合わなくなった、という感じかな。
『フユ、元気か?久しぶりに地元で集まらないか?』
メールが届いたのが三日前の夜だった。懐かしかった。懐かしくて胸が熱くなったけれど、皮肉にもその日は昼間に勤務先から廃業するという通達を受けたばかりだった。返信は……まだしていない。どう返すべきか迷っている。正しくはどう断るか、かな。
会いたくない、なんてことはない。もちろん、飲みながら懐かしい話をしたい。だけど、彼らに対する劣等感がそれを妨げる。
近頃、便利な世の中になったもんさ。SNSを使って簡単に自分の情報を発信できて、遠くにいる誰かの情報さえ簡単に知ることができる。まあ、実名で大々的に公開しているのは、充実した生活を送ってる奴ばかりだけど。
ハルは東京でWebデザインの会社を立ち上げたそうだ。『メタボ中年のダイエット記録』などと称して、お洒落なオフィスで食べるランチを紹介する様子は、日々ワンコインランチを摂る俺とは世界が違う。
ナツは商社マンとして海外を飛び回っている。休日に巡る世界各地の絶景の写真は、日本を出たことのない俺にとって、写真集でしか知ることのないような景色ばかり。