『さよなら、はじめまして』
柿沼雅美
【「20」にまつわる物語】
はじめて木塚さんに会ったのは、20年前、私が14歳になろうとしている頃だった。学校の延長のように塾に通っていて、別の学校の子たちが集まる塾は、学校があまり好きではない私には楽しい場所だった。
『初雪、ではない。』
田中慧
【「20」にまつわる物語】
部長と私は雪の降る中、魚釣りに来ていた。お互いに釣れもせず、早く帰りたいと心の中でずっと願っている。しかし、部長と私の中でどこか我慢大会めいたものになってきていた。どちらが最初に「今日の本題」を切り出せるか大会。あと20分釣れなかったら帰ろうと約束した矢先、私の竿が揺れ始める。
『永遠に』
ウダ・タマキ
【「20」にまつわる物語】
暗澹とした気持ちで毎日を過ごすスミレ。そんなある日、スミレは一人の青年に恋をし、その青年と食事の約束をする。食事の日までに、赤いワンピースを買っておきたいと考えるスミレ。スミレは自分のことを20歳と思い込んでいるが……
『二十世紀のポルターガイスト』
日影
【「20」にまつわる物語】
二十世紀最後の日。老人は妻とふたりきりで大晦日を過ごす。進行する妻の痴呆。老老介護。そして自らにも迫る病の影。絶望と孤独が老人を飲み込む。思い出のたくさんつまった二十世紀に留まることを決意し、妻と心中をはかろうとしたその夜、部屋では奇妙な現象が起こるのだった……
『ユア・アイズ』
もりまりこ
【「20」にまつわる物語】
そのもやっている眼がすきやねん。映は一枚の写真をいつも鞄に入れて歩いていた。嫌いな雑踏を歩く時も、あの写真といっしょならうまくいくような気がして。死んだチチの写真家の弟子だった玄だけがその一枚の写真の秘密を知っていた。
『youth』
村崎えん
【「20」にまつわる物語】
二十年前、十六歳──茉奈美は、親友である明香里の結婚式で、地味だった高校時代を思い出していた。華やかな同級生の悪口を言い合い、文化祭ではもちろん裏方。それでも楽しかった、二人でいられたから。しかし記憶が今に繋がった時、茉奈美は気づいてしまう、明香里の正体に。
『いくじなし』
中杉誠志
【「20」にまつわる物語】
「あんたはいくじなしだねえ」と母親から言われ続けていた男は、十七で親元を離れ、東京に出てきた。夜の街でポン引きやバーの店長をやっていくうちに、たまたま出会った女と結婚して子供ができた。そして、いくじなしと呼ばれた男の育児が始まる・・・
『20th birthday sex』
岸辺ラクロ
【「20」にまつわる物語】
二十歳の誕生日はよく覚えている。僕が初めてセックスした日だからだ。その日僕は見ず知らずの男の部屋にいて、見ず知らずの女を待っていた。ドアのチャイムが鳴って彼女が入ってきた。彼女はタピオカミルクティーのようなワンピースを着ていて、僕の初恋はハイチュウのイチゴ味だった。