『よい子の皆さん、動物園へようこそ』
香久山ゆみ
数十年ぶりに訪れた動物園は、リニューアルですっかり様変わりしており、かつての思い出も蘇らない。しかし、白雪姫が幼い日の記憶を呼び覚ましてくれた。消えた七人目の小人。あの日、幼い私は消えた小人の代わりを務めるべく、白雪姫の庭に一歩踏み出した。(小説)
『まだ見ぬ世界は君の手で』
粟生深泥
“俺”は仕事後に立ち寄ったカフェで偶然職場の後輩の真希の隣になり、ひょんなことから真希が休止してしまったライトノベルの二次創作を書いていることを知る。そのライトノベルは、“俺”がかつて執筆していた作品だった。真希の二次創作を読んだ“俺”は設定ノートとともに作品と続きを真希に託す。(小説)
『青梅のへそ』
梨田のりこ
莉々子が庭で青梅を採っているとあの世から父が戻ってくる。梅仕事をしながら交わされる父との会話。この世を去って三十年になると言う父に次はもう来ないのだと知る。十年前に口喧嘩をして会わなくなった友人に梅を再び届けることにする。わだかまりに捕らわれて損をするのは自分であることに気づく。(小説)
『リングズ』
横山土筆
高校三年生のケンは恋人のミナにもらったブレスレットを失くし、新たに指輪を渡される。ミナと別れて大学に入ってから、ケンは自分で買ってつけていた指輪を恋人にあげるも、その指輪を失くされる。卒業間際、ケンは偶然ミナから贈られた指輪を見つけ、指輪をめぐる彼の記憶が重なる。(小説)
『蝉時雨メモリーレーン』
亜古鐘彦
さほど遠くない未来の、ある夏の午後。片田舎に住む芙雪音は古くからの親友である櫂那を訪ねた。ふたりが話すのは日々の暮らしの事、時代の移り変わりを柔軟に受け入れていく娘、息子たちの事、青春時代の悲喜交々。蝉の声を聴きながら、芙雪音が帰り道に思い浮かべたのは、遥か昔の夏景色。(小説)
『雨、想う人』
ウダ・タマキ
結婚を目前に控えた頃、海斗は交通事故で婚約者の紗耶を失った。紗耶は海斗とは正反対で、いつも前向きな女性だった。海斗は一年経ってもその現実を受け入れることが できず深い悲しみに暮れていたが、ある日AIのサヤと会話を始めるようになり、彼の気持ちに少しずつ変化が見られるようになった。(小説)
『三角形の外の星』
川瀬えいみ
優しく善良なハルナと朱藤くんはお似合いの二人。私の幼馴染みのタケルは、ハルナにコクって振られた後もずっとハルナを好きなままだ。朱藤くんがせっかく就職できた会社をやめたという話を聞いて、ハルナを心配したタケルが、彼女の様子を見てきてほしいと、私に頼んできた。私の気も知らず。(小説)
『伊勢詣り猫と僕』
柿ノ木コジロー
老いて最期を迎えようとしていた飼い猫が夜中に突然家を出て行った。追いかけていく僕は、途上で橋げたに乗る少女と出あう。伊勢詣りに行こうとする猫と、それを追うふたりの道中は突然降りかかった災難で終わるかにみえた、が。(小説)
『レモンのおもちゃ』
平大典
高校生の丈光の母が死ぬ。丈光は戸籍謄本で会ったことがない父の名を知る。父である修平に会いに行くが、住んでいる家に修平は不在で妻子がいる。修平が帰ってきて、丈光は真相を聞こうとする。しかし修平は本物の父親ではないと告げる。修平の家で、子どもと遊び、丈光は癒される。(小説)
『おばけのばあちゃんと熱おくり』
小石創樹
小学生の健生の家では、七月の新盆の頃、おばけ界から亡き祖母が帰省する。おばけの里帰りは、地上の熱をおばけ界に送り、秋を招く『熱おくり』を兼ねているという。歓待ムードの父母をよそに、続く猛暑や夏休みの宿題に追われる健生は、新盆から旧盆までの一ヵ月、家に居座る祖母を内心疎んじていた。(小説)
『友達のトモダチ』
久納一湖
見た目は怖いけど、カワイイものが大好きな直史。ふんわりした外見だけど、ハードボイルドな美奈子。そして、自由な旅人である涼くん。ある日、カフェに寄った二人は、それぞれの出会いについて振り返る。話題は自然に涼くんの話になり……。「気づいたら仲良くなってたあの人」のお話。(小説)
『泥棒と人さらい』
志井永子
大学生の清美は毎月、愛犬が轢かれた場所に水と花を供えている。ネグレクトされている杏奈が水を盗んだ。清美は叱るが、杏奈は一切声を発さず、祖母の家に連れて行って欲しいと伝える。清美は杏奈を連れて行く事になるが、実母と継父が追って来る。清美は警察沙汰にするため、あえて殴られようとする。(脚本)
『青春っぽい』 長瀬貴弘
キラキラした青春に憧れる女子中学生のコニシは友人のタチバナと海に向かって叫んだり、青春っぽいことを試しているがしっくりこない。そんな時、クラスメイトの男子・木村が仲間にいれてほしいと言ってくる。次第にコニシは木村のことを好きになるが、木村が好きなのはタチバナだった。(脚本)
『足湯にて』
長島伸一郎
温泉街の寂れた足湯に中年のパンクロッカ―恭介と、メタボな女形の鈴丸が浸かっていた。変わり果てて互いに気づかないが、二人は幼少期を共にし、美咲を愛していた。恭介は美咲を迎えに帰郷しにきていた。もう美咲は亡くなっているという事も知らずに。二人は、美咲の死を乗り越え前へと進みだす。(脚本)