心臓を、冷たい風が通り抜けていった。
しんでない? いやでも確かに飛び降りて……
「もしかして、教えられてない? あの後入院して助かったんだよ」
「言ったらまた苛められると思ったのかな」
「兎に角……生きてたんだよ明菜は。でも……」
机にもたれかかり、私は震える手で仲間たちを指差した。
「あ、アンタらは、あんた達は此処で何をしてるんだ」
「私たちは……あの後明菜と仲直りして……由井ともちょっと仕返しして終わりにしたいから……色々手伝ってくれって……」
「由井、あんたが逃げても追いつける私たちが追いかけて、教室で明菜にバトンタッチしたんだ。マスクをかぶってさ」
床が歪んで、立っているのも困難になる。
となると私はあれか? 悪戯にビビり倒した挙句人をめった刺しにした、人殺しってことになるのか? これから一生、私は牛女を殺した罪を背負ったまま生き続けるのか? 牛女の影におびえながら暮らせってか?
いつぞや聞いた、件の話を思い出していた。
不吉な予言を残して死ぬ、牛の姿をした妖怪の話だ。
このどんくさい牛女が私の……件だっていうのか……?
「ふっざけんなぁぁぁ!」
激昂する私にビビッて、友達は我先にと教室から逃げ出していく。
もう息絶えていた牛女は、頬が裂ける程に残忍な笑みで血だまりに浮いていた。