小説

『空は青とは限らない』富田未来【「20」にまつわる物語】

自慢げに彼女はそう言った。
少女は、それを綺麗だと思わなかったし、よくわからなかった。
「どれがいい?あなたに貸してあげる」
少女はとりあえず、色が同じだと思った箸を適当に2本とった。
すると彼女は笑った。
「あなた、色がわからないんでしょ?」
少女のとった箸はまったく違う色の箸だった。
「昆虫も、紫外線の影響で色がわからないんだって」
少女はものすごく恥ずかしい気持ちになった。
「あなたは人間じゃないよ、昆虫」
笑う周りの生徒達。
少女は教室から飛び出した。

少女はトイレの個室に閉じこもった。そして、泣いていた。
トイレの外で、同じクラスの女の子3人組が大きなバケツを持っている。
「せーの!」
女の子達は、少女がこもっている個室の上から、大量の色水をかけた。
水の中には、いろんな色の絵の具が混ざっている。
何色かわからない、一色の絵の具の塊が、少女の頰に付着した。
少女は頰をこするが、顔に色が広がるだけだった。

 
学校を飛び出た少女は、びしょ濡れのまま道を歩いていた。
パチンコ屋の前を通ると、店の前ではセクシーなコスチュームを着た女の店員が水撒きをしている。
「いらっしゃいませー!」
パチンコ屋の看板には大きく「20周年」と書かれている。
女は柄杓で水撒きをしていて、その水で綺麗に放物線を描きながら、ハートを描いていた。
さらに歩くと、大道芸にたくさんの人が群がっていた。
大道芸のピエロは何もないところから急に20個のカラーボールを出すマジックをした。盛り上がる客達。
少女はピエロと目が合った。
すると、ピエロはまた何もないところから、急に大きな布を出して、彼女に向かって広げた。
そこには「YOU ARE A BEST FRIEND」と書かれている。
驚いている少女の足元に一匹の犬がくる。
犬がきた方向を見ると、一人のホームレスがいた。

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