小説

『異虫恋愛譚』中杉誠志(『アリとキリギリス』)

 私だって、キリギリスに依存せずに済むなら依存しない。キリギリス以外に、私の価値をありのまま認めてくれる存在があれば、私だってこんな無職のろくでなしを飼っておかない。そうじゃないから、私は彼に依存するのだ。
「ま、とりあえずゴハン食べよ。ごっはんー、ごっはんー♪」
 キリギリスは即興の歌を口ずさみながら、私に席を勧め、自分も私の対面に座った。
 キリギリスの歌う軽薄な愛の歌は、今日も私の疲れを癒す。

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