小説

『20』月山

 背後から、友人の声。振り向く。同じ顔が20。友人が20人立っている。20人の友人が俺に語りかける。
「あ? どしたの変な顔して。気分悪いの?」
「いや……え……おまえ……」
「そんなんでイベント大丈夫か?」
 イベント。何のだ。
「せっかくの20周年なんだからさ」
 20。
「楽しみだよな。椅子は20しかないんだってさ、座れるかな。20のキャンドルが飾られてて20の料理が出てきてスタッフが20人いるんだよ。招待状もう作った?」
 招待状。
「俺が招待状作るの」
「自分で作ったやつじゃないと自分を招待できないだろ? 作ってねえのか。こっちはもう出し終わってんだぞ。ちょっとだけ中身教えてやる。20本の尾を持つ猫の話でな」
 ああ。
「それさっき見た」
 マジかよ勝手に見んなよなー、と言って20人の友人は笑う。
 あーそうだ。
 俺も招待状作らないといけないのか。
 じゃあ、あれにしよう。
 20の数字がついた、時計の話を書こう。

 俺の背後に、19人の俺がいるような気がした。

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