小説

『野ばら』化野生姜(『野ばら』)

それは、この星に異常が無いか偵察するドローンの羽音でした。
それは西と東から左右に五機ずつ隊列を組んで、それぞれ青年と老人の住む家の格納庫へと向かっていきます。そうして青年が気がついてみれば、老人が先ほどまで遊んでいたゲーム盤を片付けるところでした。

「やれやれ、じゃまが入ったな。今日はここまでとしよう。ドローンの持ち帰った映像にお互い面白い物でも映っているといいがの…。」

そう言うと、老人はちらりと期待のこもった目で青年の方を見ました。
老人はこうは言いますが、実際は映像を家の中にある検索機にかけてしまえばそのあとは自動的に異常が無いかコンピュータが調べてくれるので、暇なことこの上なかったのです。それはもちろん、青年も承知のうえでした。
青年は笑いをかみ殺すと、老人に向かって言いました。

「じゃあ、そのお仕事が終わりましたら、私の家で夕食などいかがでしょうか?そうして、ゲームの続きをいたしましょうか?」

すると、老人は大仰なそぶりで両手を広げました。
「おお、なんということだろう。お互いに大小の違う惑星の兵士同士なのに、こんなお呼ばれをしてしまってもいいものだろうか?」

それには堪えきれず、青年はくすくすと笑い出しました。
老人も同じように笑いました。
ミツバチは太陽が沈む前に自分のねぐらへと帰って行きます。
日は、だんだんと暮れて行くようでした…。

青年の家で夕食が終わると、さっそく二人はゲームを始めました。
それは、互いに敵将を配置し、その周囲に軍事用のドローンや強化した兵士を置いて戦わせるという将棋に似たゲームでした。そしてそれは、プログラミングさえできてしまえば、地形や兵士や環境をいくえにも変えられる自由度の高いゲームでもありました。それは老人の惑星でも、青年の惑星でも有名なゲームでしたが、この惑星に来た当初、青年は老人に負け続きでありました。

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