小説

『爆弾』初瀬琴(『白雪姫』)

 これから口にすることが恐ろしくて堪らない。やはり、何も感じずに終わらせた方が良かったのではないか、という後悔がかすめる。こんな、残酷な仕打ちをするくらいならば、今この瞬間に砕け散ってしまいたい。
 それでも、それは叶わない。これは、物である私があの日々を得られた代償なのだろう。
 「それは、白雪姫です、お妃様」
 静寂が響く。
 しかし、すぐに王妃は「そうか」とだけ呟き背を向けた。それは、静かな響きだった。
 が、部屋から足音が消える前に大きな叫び声がした。
 私は、世界が壊れてゆくように感じた。

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